「怒りの荒野(67)」

2019-11-07

I GIORNI DELL’IRA「怒りの日」 (伊)、DAY OF ANGER(英)「怒りの日」劇場公開作

カテゴリー(Giuliano Gemma)

監督トニノ・バレリー、脚本アーネスト・ガスタルディ、トニノ・バレリー、撮影エンツィオ・セラフィン、音楽 リズ・オルトラーニ、出演ジュリアーノ・ジェンマ、リーバン・クリーフ、ウォルター・リラ、アンドレア・ボシック、イボンヌ・サクソン

ジュリアーノ・ジェンマ主演のマカロニウエスタンの最高傑作。マカロニウエスタン全作品を通じてもベストテンには欠かすことのできない作品である。マカロニウエスタンを論じるとき真っ先に話題に上がるのが、「続・荒野の用心棒(66)」の棺桶マシンガンと、本作のガンマン10戒であることからもマカロニウエスタンの魅力を人々に浸透させる上において、本作品の果たした役割は非常に大きいといえる。

みなし子として馬小屋のマーフ老人(ウオルター・リラ)の手で育てられた若者スコット(ジュリアーノ・ジェンマ)は、町の皆から虐げられながら成長した。しかし、いつか一流のガンマンになるという夢をもっていた彼は毎日密かに木彫りの拳銃で、練習を繰り返している。そんな彼の前にある日、陰を背負った初老のガンマン、フランク・タルビー(リーバン・クリーフ)が現れる。タルビーにあこがれるスコットは、タルビーの危機を救ったことをきっかけに彼のそばにおいてもらうことを許され、数々の試練を乗り越える過程で、タルビーからガンマンとしての10の心得を伝授されるのだった。

一流のガンマンに成長したスコットはタルビーと共に町に舞い戻りそれまで彼に冷たい仕打ちをした人々に、自分の存在を認めさせていく。タルビーにとっても町の人々は昔、 彼を裏切り、金を横取りした憎い相手だった。町民にとって恐怖の対象となったスコットとタルビー。しかし、スコットは自分のしていることに少しずつ疑問を抱き始める。『人に恐れられ、人を傷つけるガンマンの生き方が本当の幸せなのか』ついに、タルビーがスコットの育ての親である馬番のマーフ老人を殺したことからスコットはマーフ老人の形見の拳銃を手にタルビーとの対決を決意するのである。

ジェンマの主演作品は通常悪役の魅力に欠け、ジェンマのワンマン映画に陥りがちだった。しかし、リーバン・クリーフを相手役に迎えたことにより、これまでの明るいだけのジェンマではない、暗い過去を背負いながら拳銃使いになる夢と正義の狭間で苦悩する若者の姿を演じきることができた。復讐や金などへの執着と違ってその目的が純粋であるためにジェンマのすがすがしい個性と一致するうえに、他の作品以上の“執念”を描き出すことに成功しているのだ。

更にこの作品の魅力を倍増させているのが、連続する決闘シーンと見せるガンプレイだ。拳銃使いの生き方がテーマであるが故に当然決闘やガンプレイのシーンは多くなってくる。巻頭でタルビーが、スコットに言い掛かりをつけてきた町の男パーキンス(ロマーノ・プッポ)を倒すシーンに始まり、クライマックスのタルビーとスコットの対決まで、10を数える決闘シーンが織り込まれている。観る者を魅了するのは、タルビーとの対決を前に襲い掛かる手下達を師匠であるタルビーから教わったテクニックを駆使しながら倒していくシーン。

干し草の束を前転しながらひらりと飛び越えると同時に2人の敵を撃ち倒す、銃を宙に放り捨てたと見せ、地に伏せてキャッチし、後ろの相手を倒す、西部劇の面白さはここにあると言わんばかりの格好良いシーンが連続する。ここでひとりを倒すごとにタルビーから教わったガンマンとしての心得をつぶやいて行くのも心憎い。

クリーフも負けてはいない。両手を縛られたまま飛んで来たピストルを受け止めて一瞬に馬上の3人の敵を倒したり、倒れ込みざまに2階の敵を倒す抜き撃ちを見せたり、若いスコットを凌ぐテクニックの数々を見せてくれる。タルビーが見せる最高の見せ場は、彼を倒すために送り込まれてきた殺し屋(ベニト・ステファネリ)との対決のシーンだ。離れた距離から馬に乗って疾走しながら先込め銃に弾丸を込めて撃つという決闘において、弾丸をあらかじめ口に含んでおき、銃身に吹き込んで弾を込めるという離れ業をやってのけるタルビー。そのアイデアに思わずうならされてしまう素晴らしいシーンであった。

しかし、そんなタルビーもマーフ老人からスコットに託された魔性の拳銃の前に敗れ去る。タルビーの肩を撃ち「一度傷つけた相手は必ず殺せ」という教訓通りに、涙をこらえてタル ビーに止めを刺すスコット。自分の師匠と対決し、やがては倒さねばならぬ非情な世界に生きる者の悲しみを描ききったこの作品は、ジェンマ主演の作品の範疇に止まらず、マカロニウエスタン屈指の傑作であることを断言できる。