「南から来た用心棒(66)」

2019-11-07

ARIZONA COLT(伊・英)「アリゾナ・コルト」劇場公開作

カテゴリー(Giuliano Gemma)

監督ミケーレ・ルーポ、脚本エルネスト・ガスタルディ、撮影グリエルモ・マンコーリ、音楽フランチェスコ・デ・マージ、出演ジュリアーノ・ジェンマ、コリンヌ・マルシャン、フェルナンド・サンチョ、ロベルト・カマルディエル、ロザルバ・ネリ、ジョバンニ・パゾフィーニ、ホセ・マヌエル・マルティン

「南から来た用心棒」という題名が格好良い、また原題のアリゾナ・コルトという主人公の名前もギャンブラー風の黒づくめスタイルも粋で格好良かった。ただ、あまりにも格好つけすぎて作品全体の緊迫感が薄れるというのがジェンマ主演のマカロニの傾向だ。

物語は山賊ゴルドー(フェルナンド・サンチョ)一味が手下の補充の為に刑務所を襲撃するという場面から始まる。ここにたまたま居合わせたアリゾナ・コルトはゆとりをもってゴルドー一味から逃れてしまう。あっさり逃げられてしまうゴルドー一味の間抜けさが目立って、アリゾナの格好良さは強調されるもののゴルドーの迫力を殺してしまうという結果を生んでしまった。マカロニウエスタンでは、対立する敵が凶暴・残忍・強大であるほど物語の迫力が生まれるが、開幕でこの大切な要素をだいなしにしてしまっているのである。最凶の敵が気の良いおじさんという感じのフェルナンド・サンチョというのもいただけない。フェルナンド・サンチョは実に多くのマカロニウエスタンで悪役を演じているが、彼の人の良い風貌で本格的な悪役を演じると作品の迫力をぐんと奪ってしまうようである。

ゴルドーの凶悪さを強調せざるを得ないため、やたらと無差別に町民を殺しまくることがあまりに不自然で、本作品のマイナスポイントになっている。相手がこうした間の抜けた山賊一味だけにジェンマ演じるアリゾナ・コルトも余裕たっぷり、一味のひとりケイト(ジョバンニ・パゾ フィーニ)から姉を殺された妹(コリンヌ・マルシャン)に仇をとってやる代わりに一夜を共にする約束を取り付ける。マカロニウエスタンで最も大切な目的への執念もこれでは希薄にならざるを得ない。この仇討ちを果たすためにアリゾナがとった行動も間抜けで、ゴルドー一味に正面から掛け合いにいく策の無さ。そのため、何とか娘の仇討ちはしたもののゴルドーの手で両手・両足に弾丸を撃ち込まれてしまう。ここでゴルドーが吐く「甘いぜ、アリゾナ。」というせりふは至極当然である。ゴルドーの手下ではあるが、何かとアリゾナに力を貸してくれたダブルウイスキー老人(ロベルト・カマルディエル)によって救われたアリゾナはここでやっと対ゴルドー戦に本気で取 り組むことになる。

この作品の一番の見せ場は、最後の対決。ゴルドー一味の前に包帯を両手に巻いた姿で現れたアリゾナはここで再びゴルドーから両手を打ち抜かれるが、なんとこの腕がイミテーション、黒い上着をパッとはねのけると同時に抜きはなった拳銃で目にも止まらぬ早撃ちを見せるのである。このシーンはマカロニの真骨頂。瞬く間に九人の手下を倒し、ゴルドーを棺桶にたたき込むまでノンストップのアクションが続く。また、なかなか腰を上げようとしないアリゾナに代わって一人でゴルドー一味に戦いを挑んだウイスキー老人は戦いの最中ダイナマイトで自爆して右手に大やけどを負うが、これが逆に一味の印であるガラガラ蛇の焼き印を消す役に立つというシャレたラストも用意されている。目的意識が不明確でゆとりをもち過ぎのアリゾナ・コルトには主人公としての凄みはあまり感じないが、格好よさとガンプレイの面白さで観る者を引き付ける作品である。