「荒野の1ドル銀貨(65)」

2019-11-07

UN DOLLARO BUCATO(伊)「穴の空いた1ドル」、ONE SILVER DOLLAR(英)「1ドル銀貨」劇場公開作、

カテゴリー(Giuliano Gemma)

監督カルビン・ジャクソン・パジェット(ジョルジョ・ステガーニ)、脚本ジョルジョ・ステガーニ、撮影トニー・ドライ、音楽ジャンニ・フェリオ、主演ジュリアーノ・ジェンマ、イブリン・スチュワート、ジョン・マックダグラス、ピーター・クロス、フランク・ファレル、マックス・ディーン、ネロ・パッツォフィーニ、ナッツァレーノ・ザンペルラ

ジュリアーノ・ジェンマの人気が日本でブレイクするきっかけになった1作。確かに若々しくさっそうとしたジェンマの魅力は、女性ファンをもマカロニウエスタンに引き付ける結果をもたらした。マカロニには、よくちょっとした小道具が登場する。それが、物語のラストの対決に意外性を与えることになるのだが、その傾向が強く表れているのも本作品の特徴といえる。

小道具の第1が題名に描かれた“1ドル銀貨”北軍の捕虜となっていた南軍の将校ゲーリー・オハラ(ジュリアーノ・ジェンマ)とフィル・オハラ(ナッツァレーノ・ザンペルラ)の兄弟は、解放された後に別れて、弟のフィルが先に西部に旅立つ。そのときお守りにということで譲り受けるのが1枚の1ドル銀貨であった。兄のゲーリーも遅れて西部に着き、たまたまそこで雇われた町のボス、マッコーリー(ピーター・クロス)の命令で、何も知らされないままボスにとって目の上のたんこぶとなっていたフィルと対決することになってしまう。フィルの振り向きざまの抜き撃ちで胸に銃弾を受けたゲーリーだったが、ポケットに入れていた1ドルのお陰で命を取りとめるのだった。

もう一つの小道具は北軍の捕虜になっていたとき与えられた銃身を切り落とした拳銃。銃身を切り落とされているため、狙いがつけられないこの拳銃が逆にラストで役に立つというアイデアを凝らした対決シーンが用意されている。こうした意表をつくアイデアの面白さ、しっかりした物語の構成がこの作品を盛り上げているが、何といっても若々しいジェンマそのものが一番の魅力。イーストウッドやネロのようにひらひらするポンチョやコートをジェンマは着込まない。あくまで動きやすいシャツと上着のみのシンプルなスタイルである。他のマカロニヒーロー達の寡黙で静的な魅力に対して、ジェンマの魅力はあくまで明るく動的なのだ。そして「怒りの荒野」や「怒りの用心棒」などの例外はあるものの、ほとんどの作品で女優とのロマンスがからんでくるのもジェンマ作品の特徴のひとつ。それも軽いノリでやたらと女性に声をかける軟派なパターンと本作のように愛する女性をひたすら守る誠実な若者というパターンがある。

ジェンマがマカロニウエスタンの魅力を広げ、女性ファンの獲得に大いに貢献した。しかし、そのためにジェンマの作品多くが、マカロニ独特の凄みをもち得ず、本格的なマカロニウエスタンファンからは、ジェンマ作品の評価が今一つの段階で留まっているのも残念な事実だ。