「ガンクレイジー(66)」

2019-11-07

BOUNTY KILLER(伊)「賞金稼ぎ」、UGLY ONES(英)「汚ねえ奴ら」劇場公開作

カテゴリー(Tomas Milian)

監督エウジェニオ・マルタン、脚本ホセ・G・マエッソ、エウジェニオ・マルタン、撮影エンツィオ・バルボーニ、音楽ステルビオ・チプリアーニ、出演リチャード・ワイラー、トーマス・ミリアン、エラ・カリン、マリオ・ブレガ、ヒューゴ・ブランコ

日本でミリアンが初めて登場したマカロニウエスタンである。公開当時から悪役であるはずのミリアンが主役であるリチャード・ワイラーを食ってしまった作品として話題をよんでいた。当時のパンフレットを見てもワイラーに比べてミリアンのスチー ルが圧倒的に多い。しかし、それだけではなく、開幕からの、馬の足元を通してがけ下をうかがうカメラワークに始まり、ライフルと拳銃の射程距離がしっかりと計算されたガンファイトを観るだけで、本作がただの作品ではないことが暗示される。

捕らえられた凶悪犯ホセ・ゴメス(トーマス・ミリアン)は、護送される途中に故郷の村の近くを通りかかる。このチャンスを逃さず、幼なじみの女イーデン(エラ・カリン)の手引きで銃を手にしたゴメスは手錠のまま保安官を皆殺しにして故郷の村に立てこもった。首に掛かった賞金は3000ドルに跳ね上がり、その賞金をねらってやって来たのが凄腕の賞金稼ぎルーク・チルソン(リチャード・ワイラー)。稼いだ賞金はこつこつと銀行に預金し既に7000ドルためているルークはゴメスを最後の獲物としてねらっていた。早々にゴメスの居場所をつきとめたルークだったが、村人は土地者であるゴメスに同情的だ。幼いころに強盗に会い家族を皆殺しにされた彼の不幸な過去を知っているからだ。ルークの存在を知り、対決を挑んだゴメスは、ルークの早撃ちの前に一度は、捕らえられるが、町民らの協力で逆転に成功。増 強した部下たちとともにルークをなぶりものにしたあげく馬小屋にぶちこんでしまう。しかし、ゴメスは村人の知っているかつての彼ではなくなっていた。追う者がいなくなった気安さから、ゴメスとその部下たちは、村人相手に食料品店を襲ったり、鍛冶屋を馬で引きずる乱暴をはたらいたり、勝手放題の暴挙に出たのである。終に町を出ようとした青年を射殺したことから、イーデンもゴメスの本性を悟り、屋外でさらし者にされていたルークの縄を断ち切るのであった。3000ドルの賞金のため、なぶりものにされた自らの復讐のため、そして、苦しめられている村人のために、ルークは賞金稼ぎの本領を発揮、凄まじい早撃ちの妙技で部下を次々に倒していく。残るはゴメスただひとり、宿命の対決は終に幕をあけるのである。

この作品が特に素晴らしいのはラスト。イーデンから裏切られたゴメスがちらりと見せる悲しみの表情が良い。手下たちは皆ルークと村人に殺され、最愛のイーデンも今や自分に銃を向ける存在になった。全く自分の味方はいなくなってしまったゴメスの心情をミリアンは目の動きと表情のみで表現してみせる。3流のマカロニならここでイーデンの銃を奪いとったゴメスがすぐに彼女を撃ち殺すところだろうが、イーデンを愛しているゴメスに彼女を殺すことはできない。彼は銃をもって勝ち目のない対決に身を投じるのである。「もはや誰も信じられない」背後まで気を集中しなければならなくなったゴメスが、老人の取り落とした銃をすかさず足で踏み付けるシーンまで描き出す心憎さ。ルークの必殺の銃弾を浴びて血の混じったよだれを流しながら砂まみれになって倒れ伏すゴメスの目から流れ落ちる一筋の涙。砂を巻き上げる荒い呼吸がぴたりと止まり、ゴメスの死が暗示される。その大迫力のアップに重なってチプリアーニのメロディが流れるこの場面はマカロニ屈指のラストシーンだ。