「そして、神はカインに語った(69)」

E DIO DISSE A CAINO(伊)「そして、神はカインに語った」、AND GOD SAID TO CAIN(英)「そして、神はカインに語った」TV/DVD公開題名「そして、神はカインに語った」劇場未公開

カテゴリー(Klaus Kinski)

監督アンソニー・ドーソン、脚本アントニオ・マグエリッティ、ジョバンニ・アデッシイ、撮影ルチアーノ・トラセーニ、リカルド・パロティーニ、音楽カルロ・サビーナ、出演クラウス・キンスキー、ピーター・カーステン、マイケル・コビー、セーラ・ミケランジェリ、リー・バートン、アラン・コリンズ

クラウス・キンスキー主演と呼ばれる作品は多いが、実質的にはゲスト出演としてのチョイ役だったり、悪役だったりすることがほとんどである。キンスキー自身が自分をメインに扱うように、ゴネた結果に違いない。いずれにしても、あの、強烈な個性を放つマスクと尋常ならざる雰囲気で正義の味方を演じるのはやはり無理があるからだろう。しかし、この作品はそんなクラウス・キンスキーが単独で正義のヒーローとして主演した唯一の作品である。

無実の罪を着せられ、恋人まで奪われた男が出獄した後、復讐をする物語。作品のほとんどが町に舞い戻った彼と仇の一味が砂嵐の中で戦うシーンで構成されている。典型的マカロニストーリーだ。

10年間冤罪で刑務所に服役していたゲーリー・ハミルトン(クラウス・キンスキー)は出所後、馬車の中で若者ディック・アコンバー(マイケル・コビー)に出会う。軍の士官学校から帰って来た彼は地主の父の元に帰る途中だという。アコンバー名を聞いたゲーリーは「ゲーリー・ハミルトンが帰って来たと父親に伝えておいてくれ」と言い残すと馬車を降りた。高性能のライフルを手に入れたゲーリーはアコンバーの牧場を目指す。アコンバーは、10年前に軍の金貨強盗と護衛の将校殺害の罪をゲーリーに負わせ刑務所送りにしたのだ。さらに、彼の恋人マリア(マルセラ・ミケランジェリ)を奪ったのもアコンバーだった。息子のディックはゲーリーのことを聞いて、顔色を変える父を訝しく思うが、アコンバーは真相を息子に話すことはしない。

砂嵐が襲って来た夜ついにゲーリーが姿を現した。この作品の特徴は悪役の側にけっこう人情味があること。アコンバーは地主になっているが、帰って来たディックを一家や牧童たちが暖かく迎える場面や、仲間がゲーリーから殺されるたびに手下たちが死んだ相棒の名を呼んで嘆く場面などもある。ゲームのように殺しまくるマカロニにあって、悪党にも人としての感情があることを描いた点は異色と言えるだろう。優しい父がなぜゲーリーから付け狙われるかわからないディックがゲーリーと話し合いに行く展開になり、やがて実の父から誤って撃たれるという壮絶なラストへとつながっていく。

砂嵐の風が巻き上がる丘の上から死神を思わせるゲーリーが馬を走らせてくる場面など雰囲気は最高。キンスキーがアクション俳優としても一流であることを示すかのように全編が激しいアクションと銃撃戦で構成されており、ゴシックウエスタンの最高峰と、海外で高く評価されているのも頷ける。ただ、残念なことに一晩の復讐劇を描いているため、夜の場面が多い上に砂嵐という設定で画面が暗く見えにくいという欠点ももっている。