「荒野のドラゴン(73)」

IL MIO NOME E SHANGHAI JOE(伊)「俺の名はシャンハイ・ジョー」、FIGHTING FISTS OF SHANGHAI JOE(英)「シャンハイ・ジョーの戦う拳」劇場公開作品

カテゴリー( Chen Lee)

監督マリオ・カイアーノ、脚本カルロ・アルフィエロ、マリオ・カイアーノ、T.F.トランシア、撮影グリエルモ・マンコーリ、音楽ブルーノ・ニコライ、出演チェン・リー(早川明心)、クラウス・キンスキー、ピエロ・ルッリ、ゴードン・ミッチェル、ジャコモ・ロッシ・スチュワート、ロバート・ハンダー、みくりやかつとし、カルラ・ロマネッリ

「これはいける」と判断するとなりふりかまわず作品化するイタリア映画界が、やはりここまでやってしまったか、という感じで製作した作品。ブルース・リーの「燃えよドラゴン」でブームの最中にあった空手アクションの人気にマカロニウエスタンが便乗して作った珍品だ。

シャンハイ・ジョー(チェン・リー)と名乗る中国人が、西部の悪徳牧場主スペンサー(ピエロ・ルッリ)によって奴隷のようにこき使われていたメキシコ人達を解放したことから、スペンサーの怒りを買い、彼の差し向ける殺し屋達と死闘を演じる。結局ラストは東洋人の宿敵ミクリヤ(みくりやかつとし)との 対決が終わると肝心のスペンサーを倒すことすらなく終了するという破綻だらけのストーリーはあって無きがごとくだ。しかし、空手が拳銃やナイフと渡り合うアクションはそれなりに観て楽しいものになっていた。

その後、本作の続編をはじめとして空手映画とマカロニウエスタンを融合させた作品は数本誕生したが、本作のアクションが最も充実している。これは、悪役を演じるキャラクターの功績によるところが大きい。人肉嗜食の人食いカニバル(ロバート・ハンダー)、墓堀りサム(ゴードン・ミッチェル)、頭の皮を剥ぐことを趣味とする皮剥ぎジャック(クラウス・キンスキー)ら異常性格でマンガチックな悪役群がこれまた荒唐無稽なヒーローであるシャンハイ・ジョーの相手としてぴったりだったのだ。必然的にその戦いも、素手で牛を殴り殺したり、弾丸を手で受け止めたりというマンガ的なものになってくる。心に染み込む緊張感ではなく半ばコメディを観る感覚で楽しむ結果になるのも致し方ないところだろう。

ラストの対決はメキシコの農村でくつろいでいた主人公に宿敵みくりやが挑戦し、主人公が出て行くとそこは西部の町になっているという有り様。このシーンはメキシコの町の裏に西部の町が作られているスタジオのセットの裏側を隠しもせず撮影してあるので思わず呆れてしまったが、これもマカロニ的なおおらかさだろう。主演を演じるチェン・リーという俳優はどこの誰とも得体の知れない人物だが、実は愛知大学で空手部の主将をしていた早川明心という日本人。一方、主人公の宿敵として登場する、みくりやも、どじょうひげに奇妙なちょんまげ、鎖帷子に袴という珍妙なスタイルだが、彼も“みくりやかつとし”という日本人らしい。そのため、両者の戦いは奇抜な格好とは裏腹に香港のカンフーとは一線を画した、“日本の空手”の動きになっていたのも面白かった。