「ライジングスターの伝説(85)」

L’APACHE BIANCO(伊)「白いアパッチ」、WHITE APACHI(英)「白いアパッチ」劇場未公開、ビデオDVD公開題名「ライジングスターの伝説」

カテゴリー(Sebasutian Harisson

監督ヴィンセント・ダウン(ワーナー・カノックス)、脚本フランコ・プロスペリ、撮影ジュリオ・ブルゴス、ルイジ・チカレッセ、音楽ルイジ・セカレッリ、出演セバスチャン・ハリスン、ローラ・ファーナー、チャーリー・ブラボ、アルバート・ファーレイ

「ソルジャーブルー」の影響を受けた後期のマカロニウエスタン。早期にビデオ化された作品だが、それはマカロニウエスタンとしてではなく異色の凄惨な西部劇として見なされたからであろう。滅びゆくインディアンの侵略者へ対する絶望的な戦いのもつ悲壮感はマカロニにふさわしいともいえるが、弱者が痛めつけられ最終的に破滅するという描き方は、マカロニのカタルシスには程遠く、不快な後味を残すだけだ。

インディアンが登場するマカロニといっても、初期のドイツとの合作のような開拓者とインディアンとの戦いを描くものとは全く違い、白人からもインディアンからも阻害された若者の悲劇が描かれている。幌馬車で西部に移住した開拓者の家族が残忍な盗賊に襲われるが、そこに通りかかったアパッチ族により一人の妊婦だけが救い出される。彼女はアパッチの部落で男児を産み落として息を引き取る。やがて男児は“シャイニングスカイ”と命名され金髪碧眼のたくましい若者(セバスチャン・ハリスン)に成長した。しかし、三角関係に関わる事故で親友を死なせてしまった彼はアパッチの部落から追い出され、白人の牧場で働くことになる。ところが、そこではこれまで以上の偏見と迫害が彼を待っていた。

アパッチの部落にも白人の牧場にも身の置き所を無くしてさすらう悲劇のヒーロー。味方は、彼を慕って部落を出る決意をしたアパッチの少女ライジングスター(ローラ・ファーナー)だけだ。放浪の旅の末、赤ん坊も産まれ、ささやかな幸せを手に入れたと思われる3人の家族に卑劣な牧場主(チャーリー・ブラボ)の追跡の手が迫っていた。ラストの戦いはまさに壮絶かつ凄惨。全く救いのない結末を迎えることになる。主人公をおびき出すために彼の妻であるライジングスターを牧場主の一味が拷問にかけるシーンなどは不愉快極まりない。マカロニウエスタン名物のリンチシーンは、ヒーローが反撃に移る前に復讐のエネルギーを充電する儀式のようなものだが、拷問の末に弱者が殺されてしまうのではカッコよさも何もあったものではない。

登場する白人の男たちがことごとく残忍かつ冷酷で、最初から子供を平気で撃ち殺す有様。残酷さがマカロニウエスタンの魅力の本質ではないことが本作品を見てよく分かる。唯一の救いは、主人公二人の間の赤ん坊がインディアンによって助けられることぐらいしかない。この後、同じスタッフにより同一テーマを扱って、より残虐な作品「SCALPS(87)」が作られ、日本でも「愛は憎しみを超えて」などという作品のイメージとは真逆の題名がつけられてDVD化された。なお、主演のセバスチャン・ハリスンは、リチャード・ハリスンの実の息子である。