「バンディドス(67)」

BANDIDOS CREPA TU…CHE VIVO IO (伊)「盗賊ども、俺は生きる、貴様らは死ね」、BANDIDOS(英)「盗賊団」、劇場公開作品、TV公開題名「虐殺の用心棒」

カテゴリー(Enriko Maria Salerno)

監督マックス・ディルマン(マッシモ・ダッラマーノ)、脚本ロマノ・ミリオリーニ、ジャン・バティスタ・ムセット、ホアン・コボス、撮影エミリオ・フォレスコット、音楽エジスト・マッキ、出演エンリコ・マリア・サレルノ、テリー・ジェンキンス、ベナンティーノ・ベナンティーニ、マリア・マルティン、クリス・ヒュエルタ

過去の栄光と復讐の執念にすがって生きるエンリコ・マリア・サレルノ演じる老拳銃使いの枯れた魅力。それに加えて、彼の弟子にあたる2人の男の友情と対決という日本の剣豪物を思わせる独特のストーリーが面白い。中でもサレルノの個性がだんぜん光っている。

マーティン(エンリコ・マリア・サレルノ)は、1流の拳銃使いである。ところが、ある日乗っていた列車が強盗団に襲われる。その一味の1人ビリー・ケーン(ベナンティーノ・ベナンティーニ)はなんと彼が昔拳銃の手ほどきをした1番弟子であった。昔の弟子との1騎討ちでマーティンは、みじめな敗北を喫し、両手を打ち砕かれる。2度と拳銃を持てなくなった彼は酒に溺れ、抜け殻のようになってしまう。ところがたまたま知り合った若者に拳銃使いの素質を見て取ったマーティンは、彼と旅回りの拳銃ショーを続けることを決め、若者を弟子として育てることに希望を見出していく。

若者には旅回りのときに使う早撃ちガンマンの芸名リッキー・ショット(テリー・ジェンキンス)という名が与えられた。マーティンの心の奥には、この若者を使って自らの復讐を果たしたいという狙いもあった。しかし、リッキーには全く別の目的があった。リッキーは、ビリーが列車を襲ったときにその列車に乗り合わせており、彼らの一味としてお尋ね者にされていたのだ。リッキーの目的は、ビリーに恩を売り、彼らの一味ではないとの証言を得ることだけだった。そのことを知ったマーティンは、落胆し、自らの手で操れる唯一の武器、改造ショットガンを手にビリー・ケーンとの決死の戦いに挑むのだった。

特に印象に残るシーンは、この対決場面だ。すべてをかけた必殺の1撃を放ったショットガンが倒した相手はなんと別人。すべては終わった、もはや自らに助かる道も復讐を遂げる道もない。諦め切ったマーティンは、ビリーに背を向け、バーのカウンターに静かに歩を進めると自らウイスキーをグラスに注ごうとする。その瞬間、ビリーの情無用の銃弾が彼の背後に撃ち込まれる。この間の取り方は見事だ。マカロニウエスタン独特の悲愴感が漂ってくる。手を砕かれ、最後には自分を殺す相手であるビリー。その、憎んでもあまりある教え子に対するサレルノの態度が微妙だ。憎悪煮えたぎる思いを胸に秘めながらも、新しい弟子であるリッキーにビリーの話をするときは師匠としての思いが顔を出す。「見ろ、リッキーこのホルスターをビリーの奴が弾丸で断ち切ったんだ。まるでカミソリで切ったみたいだろう。こんなことができるのは、西部広しといえども彼しかいないだろうな。」まるで、我がことのように自分を打ち負かしたビリーの自慢をするマーティン。こうしたシーンが随所に盛り込まれているのが、本作品の最高の魅力。カメラワークと細部に渡る描写が見事なのだ。

ビリー一味を裏切った手下をビリーが追い詰める場面、カウンターを流れるウイスキーのグラスをそのままカメラが追っていく。ウイスキーの流れてきた先にカメラが移動すると静かに顔を上げ不敵にほくそ笑むビリーのアップ。ビリーを狙い酒場で待ち伏せする山賊ビゴンザ一味をビリーとリッキーが手を組んで返り討ちにする場面、2人が振り向きざまの連射でなぎ倒すシーンを真上からの撮影で映し出す、文 句なしのカッコ良さ。結局、マーティンの死を知って初めて、己の利害を捨て、兄弟子との宿命の対決に臨むビリーとリッキーの緊張感に溢れた決闘シーン。リッキーに気づかれぬように拍車をはずすシーンがアップで撮され、カメラが引いて全身が映し出されてからゆっくりと歩みだすビリー、相手に動きを悟られぬように小麦粉の袋を撃って煙幕を張り、その隙に素早く移動するリッキーなど見所は満載。

素晴らしい場面の数々を生み出したのは、「荒野の用心棒(64)」のカメラマンであった監督マッシモ・ダッラマーノの功績だろう。このように大変魅力的な画面作り、ストーリー構成に加えて音楽も抜群。悲運の老ガンマンを演じるエンリコ・マリア・サレルノをはじめ、宿敵となるビリー・ケーンを演じるベナンティーノ・ベナンティーニも、正体不明の若者を演じるテリー・ジェンキンスも派手ではないが、演技に定評のある渋いキャストで固めた俳優陣も独特の味を出している。不必要に人が殺されすぎるという難点(マカロニなら当然という意見もあるだろうが、一流のマカロニは、人が殺されるシーンにもちゃんと必然性がある。)はあるが、マカロニウエスタンの中でも指折りの傑作と言って良い。