「生きている囚人ども(73)」

2019-12-18

CONDENADOS A VIVIR (伊)「生きている囚人ども」、CUT THROATS NINE(英)「喉を掻き切る9人」劇場未公開

カテゴリー(Robert Hundar)

監督ホーキン・ロメロ・マルチェント、脚本ホーキン・ロメロ・マルチェント、サンチアゴ・モニカダ、撮影ルイス・クアドラド、音楽カルメリオ・ベルナオラ、出演ロバート・ハンダー、エンマ・コーヘン、アルベルト・ダルベス、アントニオ・イタンゾ、マニュエル・テハダ、ホセ・マヌエル・マルティン

「情無用のジャンゴ(66)」が日本公開された折に“凄惨と悪虐ここにつきる”というコピーが使われていた。しかし、このコピーがよりふさわしい作品が未公開作品の中に存在していた。それが本作品である。どちらかといえば米国西部劇に近い雰囲気のマカロニを撮ってきていたホーキン・ロメロ・マルチェントとは思えない演出手法で実に凄惨で目を覆いたくなるシーンを連続させている。

殺人狂、拷問好きのサディスト、強姦魔など凶悪残忍な7人の囚人達の中に彼の妻を殺した犯人がいることを探っていたブラウン軍曹(ロバート・ハンダー)は、囚人を護送する途中で強盗に襲撃された馬車が横転してしまう。やむをえず、生き残った囚人たちを連れて徒歩でロッキーの山を越えなければならなった軍曹だったが、馬車には軍曹の実の娘サラ(エンマ・コーヘン)も乗り合わせていた。このような恐ろしい連中を娘連れで護送するという設定があまりにも不自然だが、この道程はまさに地獄への旅立ちとなった。

粉雪が舞う極寒の山中、鎖を引きずりながら歩む狂気の集団。そこに流れる暗澹たる雰囲気をさらに不安に駆り立てるような音楽が見る者の神経を逆なでする。この旅の最中に、ナタで足を切り落とす、ナイフで腹を切り裂く、炎で焼き殺すといった凄惨な地獄絵図が繰り広げられることになる。結局ブラウン軍曹はサラを庇ってリンチの果てに中盤で殺され、父を殺された後も一味と共に連れ回されたキャティは、唯一彼女にとっての希望だった囚人の中の若者ディーン・マーロウ(マヌエル・テハダ)も殺され、絶望の末、山小屋にあったダイナマイトに点火して生き残った登場人物すべてが爆死するという救いのない結末を迎える。

銃で射殺する場面一つ取っても顔面に穴が空き、血がこぼれ落ちる図をそのまま映し出す凄まじさだ。軍曹の妻、サラの母を殺した真犯人はマーロウであることが明らかにされたり、凶悪犯たちの足をつなぐ鎖が黄金でできており、囚人の輸送は秘密裏に黄金を運搬するカモフラージュと判明するなど、物語はしっかり組み立てられている。また、これらの場面をつなぐ人物の心の葛藤や殺戮に走る人間の獣性もけっこう丹念に描かれており、画面全体に流れる緊迫感は他の上質なマカロニに劣らない凄みをもっている。

残酷な場面は描き出せばきりがなく、結局は陳腐な見世物でしかなくなってしまうものだ。本作品のもつ徹底した緊張感は、残虐な場面なしでも十分見る者に伝わってきたのではないだろうか。かえって、映し出されるグロテスクな場面の数々が本作品のもつ価値を覆い隠してしまったような気がしてならない。