「ガンスリンガーの復讐(94)」

L MIO WEST(伊)「僕の西部」、GUNSLINGERS RIVENGE(英)「ガンスリンガーの復讐」劇場未公開、DVD公開題名「ガンスリンガーの復讐」

カテゴリー(singer)

監督ジョバンニ・ベロネージ、脚本ジョバンニ・ベロネージ、撮影ホセ・ルイス・アルカイネ、音楽ピノ・ドナッジオ、出演レオナルド・ピエラッチオーニ、ハーベイ・カイテル、デビッド・ボウイ、サンドリーニ・ホルト、ジム・バンダーウォード、ユーディ・マルセディ、アレシア・マルキュージ

1990年代に制作された希有なマカロニウエスタンである。ただし、紛れもない純粋なイタリア製西部劇でありながら、本作品をこれまで述べてきたマカロニウエスタンという呼び名で呼ぶことがふさわしいかどうか疑問が残る。西部とは名ばかりの、暴力が支配する異空間を舞台にした作品群をマカロニウエスタンとイメージするならば、本作品はそのイメージからはほど遠い。子供は学校に通い、人々はまじめに働き、争いごとは話し合いで解決しようとする。架空の世界とは異なる西部の実像に迫ろうとしているからだ。物語は「大草原の小さな家」風に少年ジェレマイア(ユーディ・マルセディ)の一人称で語られていく。

ジェレマイアの父はドク(レオナルド・ピエラッチオーニ)と呼ばれる通り医者を生業としている。インディアンの美女パール(サンドリーニ・ホルト)を妻としてジェレマイアをもうけ、仕事は誠実にこなし、争いの仲裁役も務める心優しき男である。当然、彼は拳銃を持つことすらしない。前半はこの一家の日常を牧歌的に淡々と描写しているが、そこにドクの父、ジェレマイアの祖父であるジョニー・ローガン(ハーベイ・カイテル)が舞い戻ってくる。ジョニーは西部にその名をとどろかしたガンマンであった。当初はぎこちなく接するドクとジョニーであったが、孫との交流を通してジョニーのすさんだ心は癒され、やがて彼は拳銃を墓地に埋める。

しかし、ガンマンとしての過去をもつジョニーにとって心落ち着く日は遠かった。彼を追い求めて宿敵のジャック・シコラ(デビッド・ボウイ)一味が町に現れたのだ。このジャック一味の存在がこの作品では唯一マカロニらしいところ、マカロニ特有のテーマにのって酒場に現れるジャック登場のシーンはマカロニ初出演のデビッド・ボウイの個性と相まってなかなかの迫力。ジャックはジョニーとの対決を迫り、人質としてジェレマイアを誘拐する。

これからは定石ならば、ドクなり、ジョニーなりが拳銃を手にとってのアクションということになるはずなのだが、さにあらず、アクション映画の常識を覆す展開でジャック一味は一掃され、町に平和が訪れる。ドク一家の居候になっていた浮浪者ジョシュア(ジム・バンダーウォード)が驚くべき活躍を見せるラストの対決は、予測不可能だ。これがマカロニウエスタンかと驚くほど、ほのぼのとした内容ではあるが「情無用のジャンゴ(66)」などの残酷西部劇とは逆のベクトルをもったリアリズムと家族愛を追求した点が最大の魅力となっている。また90年代においてもイタリアが西部劇を撮る意志をもち続けていたことを証明する作品としても本作は高く評価したい。

 

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Posted by 栄一水上