「殺して祈れ(67)」

REQUIESCANT(伊)「冥福を祈る者」、LET THEM REST(英)「冥福を祈る者」劇場公開作品

カテゴリー(Lou Castel)

監督カルロ・リッツアーニ、脚本アドリアーノ・ボルゾーニ、アルマンド・クリスピノ、ルチオ・バチストラーダ、撮影サンドロ・マンコーリ、音楽リズ・オルトラーニ、出演ルー・カステル、マーク・ダモン、ピエル・パオロ・パゾリーニ、フランコ・チッティ、バーバラ・フレイ、ニネット・ダボリ、ロザンナ・クリスマン

この作品は、マーク・ダモンが怪奇映画のドラキュラ伯爵をほうふつさせる扮装でメキシコ青年の一族を皆殺しにし、その土地を奪う狂気の貴族役を演じる。主演は、「群盗荒野を裂く(66)」で個性的な殺し屋を演じた若手俳優のルー・カステル。主人公が、牧師によって救われ、育てられたため常に聖書を携帯し、殺した後で祈りを唱えるという設定が面白く、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督の特別出演など話題になった部分もあった。

しかし、童顔のルー・カステルは、都会的な悪童というイメージならぴったりだが、むさ苦しい髭面のワイルドな役はあまりふさわしくない。そのため、主人公の格好良さが希薄になってしまったことや悪役のマーク・ダモンもその個性を逆に殺してしまうような役柄で、執念や凄みを表現するマカロニウエスタンとしては、あまり評価できない。主人公に天性のガンマンとしての素質が備わっていて、練習も無しに初めて手にした拳銃を自在に操るという設定も説得力が無さすぎる。

一族皆殺しから、ただ1人生き残った少年(ルー・カステル)が善良な牧師一家に拾われて育てられる。ところが、共に育てられた少女プリンシー(バーバラ・フレイ)が誘拐されたことにより、成長した彼は、生まれて初めて手にする拳銃を腰に荒縄でくくりつけ、彼女を捜しに出発する。やむを得ず殺しを重ねる度に死者への祈りをささげる彼は、いつしかレクイサント(祈りを捧げる者)と呼ばれるようになった。宿敵である貴族のファーガソン(マーク・ダモン)に出会った彼は、初めはプリンシーを助けることが目的であったが、やがてファーガソンが彼の一族を皆殺しにしてメキシコの土地を奪った張本人と知った彼は、革命軍のリーダー、ドンファン(ピエル・パオロ・パゾリーニ)の協力を得て、一族の復讐を遂げる。

祈りを捧げるガンマンである主人公をはじめ、少女の人形に頬ずりするサイコな用心棒バート(フランコ・チッティ)、拷問の様子を嬉々としてスケッチするファーガソン等、登場するキャラクターが狂気じみているところも本作の特徴。多くの決闘や撃ち合いのシーンに彩られながら物語は展開するのだが、「帰って来たガンマン(66)」のカルロ・リッツアーニの演出にしては、ストーリーのつじつまが合わないと思われる箇所がいくつかあった。最初は恋人を捜す旅だったのに復讐の相手に出会うと目的が復讐と革命の方向にすり替わってしまう点、せっかく育ててくれた牧師夫妻の存在感が最後の方では全くなくなっている点などがそれである。

酒を飲んで召し使いが持つロウソクを撃っていく射撃ゲームや、首にロープを巻き付け、互いに乗った椅子の足を狙って撃ち合うゲーム感覚の決闘方法など新手ではあるが、そうした決闘に至るまでの必然性が無く、無理がある。話題のパゾリーニ登場も、ほんのゲスト出演といった感じで少し顔を見せる程度。逆に革命の意義等を説かせたことで、政治色をマカロニにもちこみ説教臭くしてしまう効果しかなかった。何より、マカロニウエスタンに欠かすことのできない影を背負った主人公の格好良さの希薄さと、執念をもって達成すべき目的意識がころころ変わってしまうことが、この作品の魅力を大きく奪ってしまったと言えるだろう。