「マタロ(71)」

MATALO!(伊)「殺せ!」、MATALO!(英)「殺せ!」劇場未公開

カテゴリー(Lou Castel)

監督セサール・カナバリ、脚本ミノ・ロイ、エドワルド・ブロチェロ、ニコ・ダッチ、撮影ジュリオ・オルタス、音楽マリオ・ミグリアルディ、出演ルー・カステル、コロラド・パーニ、アントニオ・サリナス、ルイス・ダビラ、クラウディア・グレイビー、アンナ・マリア・メンドーサ

作品の開幕からが秀逸である。神経を逆なでするような金属的な音楽をバックに絞首刑のシーンが映し出される。薄笑いを浮かべながら自らロープに首をつっこむ不敵な男。彼は凶悪なお尋ね者バート(コロラド・パーニ)であった。彼がふてぶてしい態度を取るのには理由があった。金であらかじめ雇っていた山賊たちが救出のために町に潜入していたのだ。思惑どおり山賊の手によって救出されたにもかかわらず、金を渡す気のない彼は何と恩人である山賊の隙をついて彼らを皆殺しにしてしまう。何ともドライで、凶悪な主人公の登場が強烈な印象で描かれるプロローグだ。

彼はリーダー格のフィリップ(ルイス・ダビラ)とその情婦メアリー(クラウディア・グレイビー)、テオ(アントニオ・サリナス)ら3人の仲間と共に荒れ果てたゴーストタウンに身を潜める。駅馬車を襲って積んであった大金を強奪した一味だったが、銃撃戦の最中に傷を負ったバートをフィリップ達は助けようとせず、バートは、そのまま荒野に放置されてしまう。そんな地獄のようなゴーストタウンに迷い込んでしまった若い流れ者レイ(ルー・カステル)は、悪党たちに拉致され、なぶり者にされるが、実は彼の正体は凄腕の賞金稼ぎだったのだ。愛馬の助けと、秘密兵器のブーメランで危機を脱出するレイ。そこに、死んだはずのバートが再び登場し、強奪した金を巡って血で血を洗う凄惨な仲間割れが始まる。

本作はアメリゴ・アントン監督の「ゴーストタウンの番外地(68)」をリメイクしたもので、ストーリー的には細かいプロットまで同じ。しかし、画面の構成は全く異質だ。小さな竜巻が渦をまく不気味なゴーストタウンの描写。限られた登場人物に最小限度の台詞にマカロニ節とは趣を異にする独特の音楽。さらには、影や風の動きだけで人物の存在を暗示したり、サブリミナル効果をねらってか何の脈絡もなく瞬間的に眼球のアップを映し出したりと、実験的な映像手法が随所に見られる。全体の雰囲気はまるで怪奇映画だ。

後半に登場する若い賞金稼ぎレイもブーメランを武器として使用するなど、何から何までがユニーク。それでいて、執念や迫力、壮絶さなどマカロニウエスタンのもつ本質的な魅力はいささかも失われていない。瀕死のバートがロバに積まれた金塊を追ってよろめき去るラストまで緊張感がいささかも緩まない傑作だ。