「チャック・モール(70)」

CHAKMULL,I’UMO DELLA VENDETTA(伊)「復讐者チャック・モール」、CHUCK MOLL(英)「チャック・モール」劇場未公開

カテゴリー( Leonard Mann)

監督E・B・クルッチャー、脚本フランコ・ロザッティ、撮影マリオ・モンティオリ、音楽リズ・オルトラーニ、出演レナード・マン、ジョージ・イーストマン、ピーター・マーテル、ウッディ・ストロード、イブリン・スチュワート、ヘルムート・シュナイダー

こんな作品が日本で公開されておらずDVD化もされていないということが非常に残念だ。レナード・マンはもっと日本で人気が出てしかるべき俳優だったと思う。レナード・マンだけではない。この作品では彼の相棒となるジョージ・イーストマン、ピーター・マーテル、ウッディ・ストロードといったマカロニ主役級のガンマン達もその個性にピッタリの性格設定とファッションで水を得た魚のごとくのびのびと暴れ回る。主人公4人が馬を並べて荒野を駆け抜けるシーンは正にマカロニウエスタンの魅力全開。さらに、ラストの銃撃戦は、息つく間を与えぬほどのハイテンポで格好いいガンプレイが連続する。

E・B・クルッチャー監督は「風来坊シリーズ」で高く評価されるにいたったが、この作品を見てもわかる通り彼はコメディだけでなくマカロニの本質をしっかりとおさえることのできる監督だったといえる。「風来坊(70)」もコメディでありながら、その根底にはさすらうガンマンの孤独と弱者への優しさが巧みに描かれていたからこそ大きなヒットとなったのであろう。

チャック・モールとは、レナード・マンが演じる主人公の名前。刑務所と病院が放火され町が大混乱に陥る。悪党トム・ウド(ヘルムート・シュナイダー)の一味が混乱に乗じて銀行強盗をするために火を放ったのだ。火事のどさくさに紛れて4人の男が脱走する。チャックモール(レナード・マン)、ホンドー(ジョージ・イーストマン)、シルバー(ピーター・マーテル)、ウッディ(ウッディ・ストロード)だ。4人組の一人チャックモールは過去の記憶を失っており、その記憶を取り戻すための旅を続ける。彼らを狙う賞金稼ぎ達を返り討ちにしてその服を奪う4人組。賞金稼ぎ達がなかなか個性的ないでたちで登場するので注目していたら、そのスタイルがそのまま主人公たちのマカロニファッションとなっていた。

4人が流れ着いた町は、トム・ウドの父親リオン・ウドの一味と町のボスジョン・コールドウェルの一派が対立している恐怖の町であった。しかし、チャックモールの正体を知っているリオン・ウドは、記憶喪失しているチャックに自分はお前の父と誤った情報を吹き込み、対立する実力者であるコールドウェルをチャックに殺させようとする。リオン・ウドの娘シーラ(イブリン・スチュワート)のことを確かに覚えていたチャックは、ウドの言葉を信じコールドウェル殺しを引き受ける。コールドウェルを狙うチャック。しかし、その企てはホンドーによって阻止された。コールドウェルはチャックの実父であった のだ。

こうした独特のシチュエーションを持つ作品であるが、描かれているテーマは、友情。囚人達が逃亡の過程で危機を切り抜けることを通して堅い友情で結ばれていく。4人のメンバーがいずれも凄みを漂わせた凶暴そうな連中だけに、逆に互いを思いやる優しさには心うたれる。敵に捕らえられ行方不明になったウッディを必死で捜すシルバー。そして、撃たれたシルバーを見て我を忘れて飛び出すウッディ。彼はシルバーの仇を討つため、何発もの銃弾を打ち込まれながら敵への歩みを止めようとはしない。友のために自らの命を絶つことすら惜しまぬ男達。この姿もマカロニが描こうとする“執念”のひとつの形であろう。

壮烈な男の友情を描き出すシーンにレナード・マンの暗く沈んだマスクは良く映える。ウド一味を全滅させたのもつかの間、そこに最後の敵が立ちふさがる。それは、実の兄アランであった。アランの母は過去押し入った強盗から暴行され、チャックを産み落としたのだった。チャックを弟とは認めず激しい憎悪を抱くアランは、チャックを背後から殴りつけ彼の記憶を奪った上に無実の罪を着せたのだ。

ホンドーの協力でアランを倒すものの遂にはホンドーも失ってしまう。凄まじい戦いの末3人の友を失い、さらには自分の本当の過去を知らされたチャックは、コールドウェルの跡継ぎという立場も捨てて1人で去っていく。その顔には友を失った悲しみのみが色濃く浮かぶのだった。友情、孤独、そして執念を描く未公開マカロニウエスタンの中でも傑作のひとつだ。