「拳銃のバラード(67)」

BALLATA PER PISTORERO(伊)「拳銃使いのバラード」、BALLAD FOR A GUNFIGHTER(英)「拳銃使いのバラード」劇場公開作品

カテゴリー( Anthony Ghidra)

監督アルフィオ・カルタビアーノ、脚本エルンスト・フォン・テウメル、アルベルト・ガリッティ、アルフィオ・カルタビアーノ、撮影グリエルモ・マンコーリ、音楽マルチェロ・ジョンビーニ、出演アントニー・ギドラ、アンジェロ・インファンティ、アル・ノートン(アルフィオ・カルタビアーノ)、アンソニー・フリーマン

マカロニウエスタンはなんといっても、他国のお家芸を拝借してきたものには間違いない。そのため、巨額の製作費を投入しての大作を指向すればするほど、ハリウッド製ウエスタンのイミテーションと陰口を叩かれる運命にある。そもそも、ハリウッド製の西部劇が失っていた魅力を追求して生まれたものがマカロニウエスタンであるのだから、下手に米国を意識するよりもマカロニのマカロニたる特色を強く打ち出す ことこそが魅力的な作品を生み出す基本であろう。無名の俳優、監督による低予算の映画の中から観る者を引き付ける魅力を生むことができるのがマカロニウエスタン。そうした特色を最大限に発揮してくれた代表がこの「拳銃のバラード」である。

“登場人物の執念が生み出す壮絶さ”“場面を盛り上げる音楽”などの素晴らしい特色とともに、マカロニウエスタンのもつもう一つの魅力に“スタイリッシュな格好良さ”がある。「拳銃のバラード」に登場するキャラクターの格好良さは数あるマカロニウエスタンの中でも屈指のものだ。特に賞金稼ぎを演じるアンジェロ・インファンティの格好良さは秀逸。黒いレザーのジャケットに銀のメダルで飾ったテン ガロンハットというスタイルが、インファンティのクールなマスクにピタリとはまってこれまでになかったガンマン像を作り出していた。もう一人の主人公アントニー・ギドラも光っている。ユーゴ出身の無名の中年俳優だが、革のマントをまとい復讐に燃える心をぐっと内に秘めた渋さは同じ渋役を演じるクリーフとも違った凄みを発散していた。

そして、もう1人この映画を語る上で忘れてはならないのが、監督、脚本、出演も果たしている才人アルフィオ・カルタビアーノである。「ギャングスター」などのマフィアもので少しは名前を知られていた彼だが、その才能が本当に発揮された作品はこの1本であろう。山賊一味の頭目を演じても他の映画の悪役を凌駕する凄みを見せる上、ストーリーから、場面のひとつひとつが彼によって生み出されたものであることを考えると本当に豊かな才能の持ち主であると思う。話の組み立ては「夕陽のガンマン(65)」のパターンである。主人公は無実の罪を自分に着せた男を探すガンマン、クッド(アントニー・ギドラ)と同じ男を賞金首と狙う賞金稼ぎのニコラス(アンジェロ・インファンティ)。ニコラスが登場するシーンは「夕 陽のガンマン(65)」のクリーフが登場するシーンにそっくりだ。

2人が狙う男の名はベドージャ(アルフィオ・カルタビアーノ)。彼は、弟キンキ(アンソニー・フリーマン)の一味と組んで銀行を襲う。手を組んで後を追うニコラスとクッドの2人。互いに協力していくうちに、クッドは2人が幼い日に別れた実の兄弟であることに気がつくのだが、なぜかそのことを打ち明けようとはしない。一度は一味に捕らえられ、古い炭鉱に閉じ込められたクッドだったが、自力で脱出に成功。手下たちを1人1人倒していく。このガンプレイが映画の見せ場のひとつ。炭鉱のトロッコの中に潜み、転がり出るやいなやぶっ放す、天井の支柱からとび降りて相手の背後に立って撃ち倒すなど見事なライフルさばきを見せる。しかし、ベドージャの狙いはクッドが手下と戦っている間に弟のキンキと共に逃走することにあった。この展開も夕陽のガンマンと同じだ。駆けつけたニコラスとクッドはベドージャたちに追いつき2対2の対決。荷馬車に積んだワラ束を使って人質を救出したり、倒れたキンキの亡きがらを抱いて火をつけられた小屋から脱出したりと双方が秘術を尽くして渡り合う対決は迫力満点だ。

終に宿敵ベドージャを倒したクッドは、ベドージャの金を持って立ち去ろうとするニコラスに最後の対決を挑む。協力し合って来た2人が拳銃を持って向かい合うこの場面は勝敗を予想し得ない屈指の決闘シーンだ。この結末はそれまでの作品にありがちな、“どちらも勝ち”的な終わり方ではなく明白に勝敗が決まる。しかし、それでいて互いの格好良さはいささかも失われずさわやかな余韻をもって終わる見事な幕切れだ。

たとえ、予算は少なくても、工夫次第でこれだけ面白く格好良い西部劇ができるのだから、やはり映画は演出家の腕次第ということだろうか。アンジェロ・インファンティはその後も「アマゾネス」や「バラキ」などの大作で重要な役を演じていたが、アルフィオ・カルタビアーノ、アントニー・ギドラ、アンジェロ・インファンティの3人にはマカロニウエスタンでもっともっと活躍してほしかった。