「荒野の処刑(75)」

I QUATTRO DELL APOCALISSE(伊)「黙示録の4人」、FOUR GUNMEN OF THE APOCALYPSE(英)「黙示録の4人のガンマン」劇場未公開、TV/DVD公開題名「荒野の処刑」

カテゴリー( Fabio Testi)

監督ルチオ・フルチ、脚本ルチオ・フルチ、エンニオ・デ・コンチーニ、撮影セルジオ・サルバッティ、音楽フランコ・ビクシオ、ビンス・テンペラ、出演ファビオ・ティスティ、トーマス・ミリアン、リン・フレデリック、マイケル・J・ポラード、ハリー・バード、ドナルド・オブライエン、ブルーノ・コラッツァーリ

何とも不思議な作品である。マカロニウエスタンには間違いない。特にラスト、黒いマントにテンガロンハットを目深にかぶって荒野をさすらう主人公の姿は典型的なマカロニスタイルである。しかし、そのシーンにいたるまでは、マカロニのパターンを無視した独特の展開が続く。そもそもこの話は早撃ちガンマンの物語ではない。原題が示す通り、町からたたき出された4人のはぐれ者の道中記なのである。マカロニに理屈は不要だが、色々と深読みをしたくなる例外的な1本である。

旅をする顔ぶれは流れ者の賭博師トレビィ(ファビオ・ティスティ)、アル中のクレム(マイケル・J・ポラード)、妊娠した売春婦バニー(リン・フレデリック)、死へのあこがれを抱く黒人のバット(ハリー・バード)、の4人。妊娠して売春婦としても生きていけなくなったバニー、黒人仲間からも疎外されるバット、さらに彼らからも役立たずとののしられるクレムなど、彼らは社会からはみだした中でも更につまはじきにされた者たちなのだ。町を追い出された彼らは仕方なしにあてのない旅をすることになるが、そこに現れたのがお尋ね者のチャコ(トーマス・ミリアン)。最初は4人の仲間として行動していたチャコだったが、やがてその本性を露にしていく。トレビィとバットを縛り上げると、クレムに犬の真似をさせ、バニーを犯すチャコ。更にチャコは、敬虔なモルモン教徒の一家を皆殺しにするなど、悪虐の限りを尽くすのである。

ここまでの展開からは当然壮絶な復讐物語が予想されるのだが、観る者の予想に反して話は展開していく。チャコの言いなりになっていたクレムが、乱れたバニーの衣服を整えてやると、背後からチャコに立ち向かおうとするのである。一寸の虫にも五分の魂、ささやかな抵抗も空しくチャコに撃たれて重傷を負った彼を他の3人も見捨てはしなかった。炎天下の中、降りしきる雨の中、即席の担架を担ぎながら4人は決死の旅を続ける。自分も相手も死に直面した極限状態の中で、仲間を助けようと懸命になるはみ出し者たち。どろどろとした画面が続く中で見せられるこの行為は逆に人間の心の奥に潜む善性を浮き彫りにするのだ。

どしゃぶりの雨の中、クレムはトレビィとバニーの幸せを祈りながら息を引き取っていく。ところが、恐ろしいシーンがこの後にくる。食物がなく飢えて死を待つしかなかったバニーとトレビィの前にバットが「大きな獣を仕留めることができた」といって大きな肉のかたまりをもってくるのだ。喜々として肉をほおばる二人。しかし、この肉片はクレムの遺骸から切り取られたものであった。この物語展開でなぜカニバリズムのシーンが挿入される必要があったのか理解に苦しむ。この事件をきっかけに完全に精神に異常を来したバットは2人の前から姿を消し、バニーとトレビィの二人旅となる。

これからの物語はさらに面妖な展開を見せる。男女がやっとたどりついた山奥の雪深い町は、なんと男だけが生活する不気味な町であった。女を極端に怖れ2人に冷たい視線を向ける男たちだったが、バニーの出産を迎え彼らは献身的にはたらきはじめる。懸命の介護にもかかわらず、過酷な旅で疲弊しきっていたバニーは男児を産み落とした代償に自らの命を落とす。しかし、誕生した新しい命は無気力で退廃的な男たちの心に希望の光を灯した。男たち の熱望に応えてかわいい赤ん坊を町に残すことを決めたトレビィは再び孤独な一匹狼に戻り憎きチャコを探すために旅立つのだった。

ラストはいよいよトレビィとチャコの対決。ところが、この対決も異色だ。トレビィはチャコの寝込みを襲って両手を拳銃で撃ち抜き、抵抗力を奪ってからカミソリでなぶった後に止めを刺す。必死にクレムを担ぎ、バニーの死に涙したトレビィが見せるこの冷酷さ。全編が大きく3つの流れに分けられ、それぞれの関連性が薄いという欠点はあるものの、世間からはみだした者たちの生き様を通して人間のもつ善と悪の両面を極端な形で描き出したマカロニの中でも他に例をみない異色作だ。