「野獣暁に死す(68)」

OGGI A ME…DOMANI A TE(伊)「今日は俺、明日はお前」、TODAY ITS ME…TOMORROW YOU(英)「今日は俺、明日はお前」劇場公開作品

カテゴリー(Brett Halsey)

監督トニノ・チェルビ、脚本トニノ・チェルビ、ダリオ・アルジェント、撮影セルジオ・ドッフィツィ、音楽フランチェスコ・ラバニーノ、出演モンゴメリー・フォード(ブレッド・ハルゼイ)、仲代達矢、バッド・スペンサー、ウエイド・プレストン、ウイリアム・バーガー、ジェフ・キャメロン、フランコ・ボレリ

マカロニウエスタンも、ゲテ物と見られていた時代を経てその意味を世の中に認められた頃からそれまで出演を拒んでいたハリウッドの大物スター達も次第にマカロニウエスタンへの出演を承諾するようになってきた。この作品は、「用心棒」から黒沢明のアイデアを拝借したマカロニウエスタンがついに、黒沢作品の常連仲代達矢をかつぎ出したということで大いに話題を呼んだ作品だ。日本公開の時もポスターで大きく仲代主演が強調されていた。

仲代が出演したことにより、本作品の話題性が高まったことは間違いない。ただし、仲代の演技に凄みはあるのだが、サイコっぽく目をギョロつかせた表情はいささかくどい。さらに、スマートすぎてアルド・サムブレルやダン・バディス、クラウス・キンスキーあたりが演じる悪役の持つ異常性格的な不気味さがあまり感じられない。せっかく仲代が出演しているのだから、これまでの悪役像とは一味違う、主人公を翻弄するような知略の冴えを見せてほしいところだ。

ところが、ラストの対決シーンでは主人公が待ち受ける中で「散らばれ」と指示を出して仲間を減らしていったり、主人公達が銃身に布を巻いて銃声を消す策略にひっかかり、敵は遠くだと判断した誤りを部下のモレノ(ジ ェフ・キャメロン)に指摘されたりとボスとしての威厳までが揺らいでいるのは残念。結局のところこの作品の悪役は仲代でなくても良かったのではないかという印象を受けた、仲代達矢という日本のスターを招いたからには、彼の個性をもっともっと生かしてほしかったと思う。

しかし、そのこと によってこの作品が失敗作になったかというとそうではない。仲代抜きでも主演のガンマン達の格好良さで一流のマカロニウエスタンとしての面白さを保っている。後期のマカロニウエスタンのなかでいくつかの例が見られる集団ヒーロー物であるが、集団故の葛藤や、仲間同士の対立などの複雑なテーマはない。主人公のビル・カイオワ(モンゴメリー・フォード)に金で雇われた4人のガンマンが協力して、カイオワの妻を殺し、彼に無実の罪を着せたエル・フェゴー(仲代達矢)の一味を倒すというただそれだけの話である。金で雇われたにしては、それぞれが誠実にカイオワのために命をかけて働く。1人1人仲間が増えていき5人全員で馬を連ね、さっそうと駆けていく場面は実に格好良い。「続・荒野の用心棒(66)」のジャンゴを思わせるいで立ちに暗い陰を宿すクールなマスクのモンゴメリー・フォードがマカロニウエスタンのムードをみなぎらせて素晴らしい。

タイトルでフランチェスコ・ラバニーノ作曲のテーマをバックに朝霧の中、馬を走らせる姿はマカロニの中でも屈指の名シーンだ。他の4人もバラエティにとんだ個性という面で「七人の特命隊(68)」には一歩譲るもののそれぞれに個性的。巨漢のオバニヨン(バッド・スペンサー)、元保安官でライフルを改造したメアズレッグを愛用するジェフ・ミルトン(ウエイド・プレストン)、若いが腕の立つバニー・フォックス(フランコ・ボレリ)、きざな賭博師フランシス・コルト・モラン(ウイリアム・バーガー)らがそれぞれの魅力を見せてくれる。ラストのフェゴー対カイオワの一騎打ちは、定石通りでけりがつくが、その対決に至るまでの闇の中での集団戦は、静かな緊迫感があって楽しめる。それにしても、この題名は、あまりにも大藪晴彦テイストが強すぎてマカロニウエスタンらしさが全く伝わらないところは残念。