「砂塵に血を吐け(67)」

MILLE DOLLARI SUL NERO(伊)「黒い1000ドル」、BLOOD AT SUNDOWN(英)「夕陽の血」劇場公開作品

カテゴリー(Gianni Garko)

監督アルバート・カーディフ(アルベルト・カルドーネ)、脚本アーネスト・ガスタルディ、ビットリオ・サレルノ、ロルフ・オルセン、撮影ジーノ・サンティーニ、音楽ミケーレ・ラクレンツァ、出演アンソニー・ステファン、ジャンニ・ガルゴ、ジェリー・ウイルソン、アンジェリカ・オット、エリカ・ブランク

実の兄弟が血で血を洗う戦いをしなければならない壮絶なストーリー、悲愴感をいやが上にも高めるミケーレ・ラクレンツァのトランペット曲など、多くの特徴に彩られた傑作。中でも最高に輝いているのが、サルタナを演じるジャンニ・ガルゴだ。他のマカロニウエスタン作品でいくつも主演を演じたガルゴだが、悪役を演じたこの作品こそが彼の個性を最高に生かしている。

長い刑務所暮らしを終えて故郷の町に戻ってきたジョニー(アンソニー・ステファン)は、実の弟サルタナ(ジャンニ・ガルゴ)が町のボスとして君臨し、町民から恐れられていることを知った。ジョニーの出所を喜ぶサルタナだが、その態度はなぜかよそよそしい。実はジョニーが刑務所に入れられた殺人事件も真犯人はサルタナであり、サルタナはその罪を兄の ジョニーに着せ、ジョニーの婚約者まで奪って自分の妻としていたのだ。そのことを知ったジョニーは、サルタナ一味の動きをことごとく妨害する。サルタナとジョニーの対立は、緊張の度合いを高め、2人の母の死をきっかけとして両者は終に拳銃を持って向かい合うことになる。

ストーリーを述べてくるとサルタナが極悪の敵を演じる普通のマカロニウエスタンのような印象だが、サルタナの性格設定の見事さと実の兄弟対決という設定により異様な高まりを見せることに成功している。注目のサルタナだが、彼は手下を引き連れて町中を練り歩き、用心棒代の名目で定期的に町民から金品を強奪している。妻の弟ジェリー(ジェリー・ウイルソン)を虐待し、思い通りにならない者は容赦なく撃ち殺す。自らの指先を食いちぎり、流れ出た血で「サルタナ万歳」のマークを描き、町中の者に崇拝させる狂気の男。しかし、その反面で、よっぱらいの老人に飲み代を渡して優しい言葉をかけてやったり、強奪した品物にアクセサリーがあると喜々とした表情で母へプレゼントしたりする。兄のジョニーに対しても、争いを避けようとしているのはサルタナの方である。家族へ特別の愛情を注ぐ姿はマカロニウエスタン独特の味である。

ジョニーとの対決を心に決めたサルタナは手下たちと町中を荒らし回る。燃え上がる炎の中にジョニーの姿が浮かび上がる。馬で前に進むジョニーにひるんだサルタナ一味は気押されて後退する。凶暴なサルタナも肉親のジョニーの前では別人のようになる。「母さんが悲しむ、実の兄弟で争うのは止めよう。いっしょに手を組もう」と懇願するサルタナにジョニーは母が乱戦に巻き込まれて死んだことを告げる。サルタナの目が異常さを帯びてくる。2人は終に対決の時を迎えるのだ。

サルタナのルッ クスがまた素晴らしい。ガルゴの表情は、メイキャップの仕方で様々に変化するが、今回はぐっと迫り出した眉に窪んだ眼窩、顔にしだれかかる金色の長髪。凄みのきい た劇画そのものといった容貌は、あのクラウス・キンスキーに勝るとも劣らない迫力。ラストの対決で膝をつき、ぐっとにらみつけるその姿は、執念と凄みを売り物とするマカロニウエスタンの真骨頂。勿論ポスターにもこのシーンのガルゴのショットが用いられている。この作品のサルタナというキャラクターが独立して後のサルタナシリーズが製作されていったのも当然であろう。