「サルタナがやって来る・虐殺の一匹狼(70)」

UNA NUVOLA DI POLVERE…UN GRIDO DIMORTE…ARRIVA SARTANA(伊)「砂塵渦巻き、死の悲鳴が聞こえる…サルタナがやって来る」、A CLOUD OF DUST…A CRY OF DEATH…SARTANA IS COMING(英)「砂塵渦巻き、死の悲鳴が聞こえる…サルタナがやって来る」劇場未公開

カテゴリー(Gianni Garko)

監督アンソニー・アスコット、脚本ティト・カルビ、エルネスト・ガスタルディ、エドワルド・マンサノス、撮影フリオ・オルタス、音楽ブルーノ・ニコライ、出演ジャンニ・ガルゴ、ニエベス・ナバロ、ピエロ・ルッリ、マッシモ・セラート、サル・ボージェス、ブルーノ・コラッツァーリ、ホセ・ハスペ

ジャンニ・ガルゴが壮絶な魅力を全開にして演じた悪のヒーロー「サルタナ」。この魅力あるキャラクターを生かしてマカロニウエスタンには、「サルタナもの」という新しいシリーズが生まれた。ジャンニ・ガルゴの当たり役となったサルタナだが、その他ジョージ・ヒルトン、ジョージ・マーチン、らも演じたマカロニきっての人気シリーズとなった。にもかかわらず、日本ではマカロニウエスタンの衰退期と重なり、このサルタナものは1本も公開されないままで終わっているのが残念だった。しかし、その後徐々に日本でもマカロニウエスタンのDVD化がすすめられ、本作もついに日本語字幕入りで観賞できるようになったことは喜ばしい限りだ。

サルタナシリーズはどれも傑作ぞろいだが。その中でも特にお薦めなのがこの1本。西部の007サルタナは、50万ドルの金貨を隠したと思われるガンマンのグラント・フル(ピエロ・ルッリ)を監獄から逃がす。しかし、フルは罠に陥れられ無実の罪を着せられただけだと弁明する。彼らを追ってきた、冷酷な刑務所の所長、保安官ジム(マッシモ・セラート)も、グラントから金の在りかを聞き出そうとして不首尾に終わっていたのだ。同じく、50万ドルの金貨をだまし取られた格好になった南軍くずれの山賊モンク(ホセ・ハスペ)も金の隠し場所を捜していた。そこに、政府の捜査官サム・プットマン(フランク・ブラナ)や、殺された賭博場の経営者ジョンソンの未亡人ベル(ニエベス・ナバロ)らも動き出す。

本来の物語展開にはあまり関係のない人物がやたらと登場し、流れを混乱させている面は否めないが、本作の面白さはストーリーの展開にあるわけではない。とにかく強くて頭が切れるサルタナは絶対に負けない。どんな危機も涼しい顔をして切り抜けていく。そのため、マカロニウエスタン最大の魅力である命を懸けた男の執念と悲壮感は希薄だが、その代わりとなる見所は次々に繰り出されるサルタナの秘密兵器。靴の踵に隠したコンパクトな吹き矢、爆弾を仕込んだインディアン人形、ヨーヨーになった懐中時計など要所要所で効果的にその威力を発揮する。

極めつきは、ラストに登場するパイプオルガン。大群で乗り込んで来た山賊モンク一味に対峙したサルタナは、パイプオルガンを演奏しながら優雅に迎え入れる。このパイプオルガンこそマカロニ史上に残るぶっ飛び珍兵器「皆殺しオルGUN」オルガンに仕込んだキャノン砲とマシンガンで圧倒的な敵をばたばたと全滅させる場面は、あまりに無節操な展開ながら圧巻。「続・荒野の用心棒(66)」の伝統を引き継ぐ秘密兵器による一発逆転劇だが、この荒唐無稽さには、さすがに元祖のジャンゴも呆れかえるに違いない。

その後も、グラントとの1対1の決闘場面と続き、開幕からラストまで見せ場が連続する。結局、謎だらけだった物語展開も、大きなどんでん返しなどはなく、金を隠した張本人はやはりグラント自身で、未亡人ベルと組んで仕組んだ犯行であったことが明らかにされる。寡黙で陰を背負った伝統的なマカロニヒーローから絶対負けないサバタやハレルヤといったスーパーマン的なヒーローへとマカロニウエスタンが変容していった。その、スーパーヒーローの代表的な役割を果たしているのが、このサルタナだといえる。音楽は典型的なニコライ節。渋くて格好良いサルタナの活躍を一層もり立てている。