「西部の無頼人(68)」

LO VOGLIO MORTO(伊) 「死の願望 」、 I WANT HIM DEAD(英)「奴の死が俺の願い 」劇場未公開、TV/DVD公開題名「西部の無頼人」

カテゴリー( Craig Hill)

監督パオロ・ビアンキーニ、脚本カルロス・アラビア、撮影リカルド・アンドレイ、音楽ニコ・フィデンコ、出演  クレイグ・ヒル、レア・マッサリ、ホセ・マヌエル・マルティン、アンドレア・ボスチ、フランク・ブラーニャ、クリスチィーナ・バシナリ、

新しい土地を買うために、妹メルセデス(クリスチィーナ・バシナリ)と西部にやって来たクレイトン(クレイグ・ヒル)は、泊まった宿に押し入った強盗達によってメルセデスを殺される。復讐に燃えるクレイトンは強盗の首領ジャック(ホセ・マヌエル・マルティン)一味を追う。ジャックの一味は武器商人マレク(アンドレア・ボスチ)に雇われていた。南北戦争の講和が結ばれる現場を爆破して戦争終結を阻むのが目的だ。そのことを知ったクレイトンは、一味の陰謀を阻止し、妹の仇を討つために武器商人の組織に一人で立ち向かう。

ジャック一味のアジトを突き止めたクレイトンは、そこで男たちの世話を強制させられている薄幸の女アロマ(レア・マッサリ)を救い出す。女連れの復讐の旅となったクレイトンだったが、彼はアロマの協力によって危機を脱し、復讐を果たすのだった。妹を殺した相手に復讐するために旅をするというマカロニウエスタンの定石ストーリーであるが、これは、単なる復讐物では終わっていない。「狙った奴は殺せ」という題名で音楽のみ日本に紹介されていた男の哀愁を奏でるニコ・フィデンコ作曲の主題曲が大変効果的に使われ、絵になる場面をいくつも作り出していた。メルセデスの墓に復讐を誓い旅立つクレイトンの背後に十字架に巻き付けた形見のショールが風になびくシーン、敵のアジトを見下ろしながら、クレイトンが銃とガンベルトの手入れをするシーンなどだ。仇の悪党たちが馬を駆って一人また一人と走っていく。その様子を眼下にしながら、拳銃をぐっと握りなおしてホルスターに納めるクレイトン。こうした画面構成と音楽の妙がマカロニウエスタンの本質的な魅力であることを再認識させてくれる名場面だ。

さらに、ヒルの相手役となる(レア・マッサリ)が素晴らしい。悪党一味の囲われ女でありながら、いつかは幸せになれると信じて健気に生きる女性像を好演。旅立とうとするクレイトンに同行を許された時の表情や、部屋に駆け戻り 一枚のショールのみを手に取って駆けだす仕草などはさすがに大女優、主人公以上に印象に残る。何度か主人公の危機を救うヒロインに比べて意外とヒーローは情けない。敵の一味に潜入して銃をつきつけたのは良いが、敵から背後に歩み寄られて殴られる有り様。特に面白いのはラストで、何とか南北両軍の和平締結場所の爆破を阻止し、怨敵のジャックは倒したものの、武器商人マレクを殺したジャック一味は金を持って逃走してしまう。大金を手にした一味だったが、なんと金に目がくらんだ彼らは大金をめぐって馬車の上で殺 し合い、全滅してしまうのである。必死で後を追って来たクレイトンは、風で飛ばされて来た5万ドルの札を拾い集めて、土地を買う金を手に入れてエンドとなる。こぼれた金を拾って漁夫の利を得るヒーロー。この情けなさがお話にリアルさと主人公の必死さを与えていたのが逆に面白い。

さっそうとは言い難い主人公だが、彼を慕って陰で支えていたアロマと幸せをつかむラストシーンは、ほのぼのとして心地よい。ただ、テレビ公開された際の「西部の無頼人」という題名は、野暮ったくて、あまりしっくりこない。マカロニウエスタンの題名は、もう少しセンス溢れるものにしてもらいたいものだ。