「さすらいの一匹狼(66)」

PER IL GUST DI UCCIDERE(伊)「殺しの喜びのために」、TASTE FOR KILLING(英)「殺しの喜びのために」劇場公開作品

監督トニノ・バレリー、脚本ビクター・アウツ、撮影ステルビオ・マッシ、音楽ニコ・フィデンコ、出演クレイグ・ヒル、ジョージ・マーティン、フェルナンド・サンチョ、ディアナ・マーチィン、フランコ・レッセル、ジョージ・ワン、ピエロ・ルッリ、ロレンソ・ロブレド、ホセ・マヌエル・マルティン

トニノ・バレリー監督の処女作であり、西部劇に望遠照準器が登場したことで話題になった作品でもある。主人公ハンク・フェロー(クレイグ・ヒル)通称ランキーは、お尋ね者を倒して賞金をせしめるバウンティキラー。彼の仕事のやり方は、お尋ね者の賞金が上がるのをじっと待ち、賞金が上限に達したのを見計らって仕留める方法だ。そのため、山賊一味が騎兵隊を襲っているのに出会っても自慢の望遠スコープで高みの見物を決め込み、一味が金を奪ったのを見届けてから金を取り返して賞金をせしめるという具合。

そんな彼が新しく請け負った仕事は、山賊団の首領ガス・ケネベック(ジョージ・マーティン)が 狙っている金塊をガードすること。ケネベックは、かつてランキーの兄を殺した仇でもあった。ランキーは町民にさまざまな作戦を与えて、押しかけてきた山賊団と大銃撃戦を展開する。金庫に山賊団をおびきよせてダイナマイトを爆破させ一味の大半を倒したランキーはいよいよケネベックと1対1の対決に臨む。望遠スコープライフルがなければ戦えない卑怯者とののしった宿敵に対しランキーは武器を交換することを提案する。望遠スコープ付きのライフルを構えるケネベックに対し視野の狭くなった瞬間を狙ってランキーは、レンズを通してコルトで相手の目の玉を撃ち抜き仕留めてしまう。金庫になかった金塊が、実はれんがの代わりに階段に敷き詰めてあったというアイデアを生かした落ちもついている。

こうやってストーリーのみを書いても、特色は見えてこないだろうが、この作品の異色な点は望遠スコープに代表される主人公の戦い方にある。マカロニウエスタンの主人公達は常に引くに引けない男の意地で、自分が圧倒的に不利な状況でも命を掛けて戦うところに魅力が生まれる。しかし、本作に登場する賞金稼ぎランキーというキャラクターは、常に自らを安全な状況に置いて戦うのだ。スコープで覗き見ながら、狙い撃つ戦法などはその典型。町で戦う時もランキー自身は作戦を与えるのみで、戦う当事者は町民である。自ら戦いに赴くときは、相手の人数、腕前などを計算し尽くして、自らが勝てると判断したときのみである。映画の前半でフェルナンド・サンチョ率いる一味と対決するとき、そして、ラストの対決がそうだ。

そのため、ランキーはマカロニウエスタン名物のリンチを食らわない。それどころか、ケネベックの部下ミンゴ(ジョージ・ワン)を捕らえてきて逆にリンチにかけて情報を聞き出したり、ケネベックの妻イザベル(ラダ・ラシモフ)とその息子を誘拐して来て脅迫し、ケネベックをおびき寄せたりする有り様だ。主人公一派の方が間違いなく山賊一味より悪辣なのだ。

そのため、この作品の評価は西部劇における正義を重んじる米国において著しく低い。見た目はマカロニウエスタンのガンマンそのものでありながらも、その実際は他の作品の主人公と大きく異なっていることが分かるだろう。賞金稼ぎというキャラクターのもつゆとりをもった戦いの特性は「夕陽のガ ンマン(65)」の2人のキャラクターにも見られる。そして、更にそれを究極の形で描き出して見せたのが「殺しが静かにやって来る(68)」に登場する悪魔の賞金稼ぎロコなのである。