「この盗賊どもからは、埃と死の匂いが立ちのぼる(69)」

QUEI DISPERATI CHE PUSSANO DI SUDORE E DI MORTE(伊)「この盗賊どもからは、埃と死の匂いが立ちのぼる」、BULLET FOR SANDVAL(英)「サンドバルへの銃弾」劇場未公開

カテゴリー(George Hilton)

監督フリオ・ブックス、脚本ホセ・ルイス・マルティネス、フェデリコ・デ・ウルティア、フリオ・ブックス、ウーゴ・グエラ、撮影フランシスコ・センペレ、音楽ジャンニ・フェリオ、出演ジョージ・ヒルトン、アーネスト・ボーグナイン、アルベルト・デ・メンドーサ、アナベラ・インコントレラ、アントニオ・ピカ、レオ・アンチェリス、

全くのおふざけ抜き、この作品こそジョージ・ヒルトンの凄みとクールな魅力が生かされた未公開主演作品中の最高傑作といって良いだろう。南北戦争で戦っていた兵士のジョン・ワーナー(ジョージ・ヒルトン)は、婚約者の死を最前線で知らされる。決死の覚悟で軍を脱走したワーナーを待っていたものは出産に耐え切れずに死んだ婚約者の亡きがらとその遺児だった。しかし、恋人の父親である大地主のドン・ペドロ・サンドバル(アーネスト・ボーグナイン)は娘の死をジョンの責任だと責め、赤ん坊と彼を着の身、着のままで叩き出すのだった。乳飲み子を毛布でくるみ雨の中を、そして炎天下の荒野を旅するジョン。このままいけば西部劇版「子連れ狼」というところだが、ある夜ミルク不足と寒さのためわが子は静かに息を引き取っていく。

ジョンの怒りは狂気と化した。ラッキー(アルベルト・デ・メンドーサ)、サム(アントニオ・ピカ)、フラテ(レオ・アンチェリス)らの仲間を集めたギャング団を結成したジョンは赤ん坊の死に関わった連中を次々に血祭りに挙げていく。壮絶なのは、赤ん坊にミルクを飲ませることを拒んだ牧場主の農場を襲うシーン。牧場主に桶一杯のミルクを用意させると桶の中に顔を押し付けてミルクで溺死させる残酷さ。「荒野の無頼漢(71)」をはじめとする陽気なヒルトンのイメージを払拭する強烈なキャラクターだ。

残る相手は最大の宿敵サンドバルの一家。しかしサンドバル自身も本当は娘の死を悲しみ部屋で密かに涙するような男だったのだ。サンドバルの長男を1対1の決闘で倒したジョンはその死体をサンドバルの屋敷の戸口の前にさらす。復讐が復讐を呼びお互いを破滅に追いやる空しい死闘が展開する。闘牛場でついにサンドバルを倒したジョンの一味だったがサンドバルの息子たちの追跡を振り切れずアリーナの中央に追い詰められる。

すべてを覚悟したジョンに向かって一斉に銃弾が放たれた。赤ん坊のミルクを求めてさすらうヒルトンの悲愴感漂う魅力に加えて、場面を盛り上げるジャンニ・フェリオの重々しい音楽も魅力だ。そして、宿敵役を米国の名バイブレイヤー、アーネスト・ボーグナインが演じたことによって悪の側にも魅力が生まれ作品の重みがぐんと増している。ただし、サンドバルが闘牛場で、牛から突き殺されてしまう処理はいただけない。宿敵同士の戦いなのだから、もっと劇的な決着のつけ方があったはずである。