マカロニウェスタン大全 「風の怒り」1971

2021-04-22

LA COLLERA DEL VENTO(伊)「風の怒り」、TRINITY SEES RED(英)「トリニティは血を見た」劇場未公開

カテゴリー(Terence  Hill)

監督マリオ・カミュ、脚本マニュエル・マリネロ、ミグエル・ルビオ、ホセ・ビンセント・ピュエンテ、マリオ・カミュ、撮影ロベルト・ジェラルディ、音楽アウグスト・マルテリ、出演テレンス・ヒル、マリア・グラジエラ・ブッチェラ、フェルナンド・レイ、マリオ・パラダ

「風来坊(70)」と「風来坊2(72)」の間に製作されたテレンス・ヒルが主演する作品。ただし、英語題名にトリニティの名前が見られるにもかかわらず、スタッフは全く別で、バンビーノ役のバッド・スペンサーも登場しない。そして、風来坊シリーズと決定的に異なるのは完全なお笑い抜きであるところ。圧政に苦しむ農民と地主との血の抗争という深刻なテーマだけに、開幕から終末まで重苦しい場面が続き、暗い暗鬱たる気分にさせられてしまう。時代と場面設定も20世紀初頭のスペインアンダルシアということで、ウエスタンの範疇には実質的には入らない。ただし、雰囲気は西部劇の体裁をとっているため、「裏切りの荒野」と同様にマカロニウエスタンと見なしていきたい。

主人公マルコス(テレンス・ヒル)とヤコブ(マリオ・パラダ)は孤児院で共に育った親友同士、故郷アンダルシアに帰って来た二人は、そこで大資本家のドン・アントニオ(フェルナンド・レイ)一家の圧政に苦しむ農民たちの姿を目の当たりにする。ドン・アントニオの愛妾であるソレダード(マリア・グラジエラ・ブッチェラ)の経営する宿に泊まったマルコスは、ドン・アントニオの長男から言い寄られるソレダードの危機を救ったことから互いに愛し合うようになる。

一方、理想に燃えるヤコブは、農民と共に革命を起こそうとマルコスにもちかけるが、現実主義者のマルコスは、ヤコブの訴えに取り合おうとはしない。しかし、密かにあこがれていたソレダードとマルコスの関係を知ったヤコブは自暴自棄になり、ドンの暗殺を決行する。暗殺は失敗、誤って他人を射殺してしまったヤコブは逆に撃たれ瀕死の状態でマルコスの元に戻るとそのまま息絶える。革命には背を向け愛するソレダードと平和な暮らしを築こうと考えていたマルコスだったが、ついに怒りが爆発、単身、農場を経営するドン・アントニオ挑戦する。

この復讐がマカロニ特有の荒唐無稽さは無縁のきわめてリアルなもの。農場の収穫物に火をつけたり、潅漑用水路をこわしたりと爽快感がまるで味わえない。やがてアントニオの屋敷に乗り込んだマルコスは、アントニオの長男を人質に取り屋敷を脱出する。馬の鞍に括り付けたロープにつながれた兄を救出しよ うとした弟は誤ってマルコスの馬を暴走させて兄を死なせてしまう。茫然自失となる弟も射殺して復讐を果たしたマルコスは、汽車でアンダルシアを脱出しようとするが車窓の外にソレダードの姿を見かけ、そちらに気を取られた隙に、アントニオの差し向けた刺客の手によって背後から撃たれて救いのないエンディングとなる。

テーマがテーマだけにおふざけ抜きなのは納得できるが、おふざけシーンとともにアクションの爽快さまでどこかに忘れてしまったことは、本作の決定的な欠点だ。