マカロニウェスタン大全 「自転車紳士西部を行く」 1973

2021-04-22

…E POI LO CIAMARONO IL MAGNIFICO (伊) 「東部から来た勇敢な男」、MAN OF THE EAST(英)「東部の男」劇場未公開、TV公開題名「自転車紳士西部を行く」

カテゴリー( Terence  Hill)

監督E・B・クルッチャー(エンゾ・バルボーニ)、脚本エンゾ・バルボーニ、撮影アルド・ジョルダーニ、音楽グイド&マウリツィオ・デ・アンジェリス、出演テレンス・ヒル、グレゴリー・ウォルコット、ドミニク・バルト、ハリー・ケリーJR、ヤンティ・ソマー、サル・ボージェス、トニー・ノートン、リカルド・ピザッティ、エンゾ・フィエルモンテ

東部の紳士サー・トーマス・ムーア(テレンス・ヒル)は亡き父の故郷である西部で生活するためにやって来る。トーマスの父から託された3人の西部男、大男のシュミット(グレゴリー・ウォルコット)、偽牧師のジョー(ハリー・ケリーJR)、コソ泥のモンキー(ドミニク・バルト)はトーマスを鍛えるため彼と生活することになった。三人は、西部の常識とは異なるムーアの行為や考え方にとまどいながらも、やがて男の友情をはぐくんでいく。

町ではモートン(リカルド・ピザッティ)らならず者の一味が幅を利かせており、紳士然としたムーアにいやがらせを仕掛けてくるのだが、彼はそれに取り合わない。しかし、牧場主オースチン(エンゾ・フィエルモンテ)の娘 キャンディ(ヤンティ・ソマー)と恋に堕ち、西部の流儀では臆病者と思われては生きていけないことを悟ったムーアは、3人のアドバイスを受けながら、拳銃と殴り合いの腕を磨いていく。ついに、キャンディとその父オースチンが見守る前で、ムーアは、さんざん彼をばかにした、モートンと起死回生の対決に挑むこととなるのだった。

「風来坊」以降のほのぼの作品群の例に漏れず、本作でも人は死なず、残酷な場面も皆無。モートンとの対決もトーマスの腕前を見せつけて懲らしめるだけで決着する。全編がほのぼのとした優しさに包まれた作品で、ムーアの成長を見極めた3人組が、美しい夕陽を浴びながら去っていくラストシーンなどはなかなか格好良いのだが、東部から来たという紳士という役がテレンス・ヒルというのは、ミスキャスト。紳士の紛争で自転車に乗ったり、朝の体操をしたりと優雅な雰囲気を出そうとしていること自体が不自然でヒルのイメージに合わないのだ。やはり、ヒルはクールかつワイルドな個性を生かせる役でないと似合わない。

このタイプのマカロニウエスタンは、弱いと思われていた紳士然とした主人公が実は強かったというのがパターンだが、この作品ではヒルは本当に争う気力がないのが、爽快さに欠ける大きな要因。やっとラストで反撃するまではスカッとしたアクション場面もなく、マカロニウエスタンのもつ魅力とは程遠い。名手E・B・クルッチャーの手から水が漏れた失敗作だ。なお、サル・ボージェス、とトニー・ノートンは黒づくめの賞金稼ぎコンビ役で登場、要所要所に登場して散々コケにされる役を楽しそうに演じている。