マカロニウェスタン大全「復讐無頼・狼たちの荒野」1968

2021-04-22

TEPEPA (伊)「テペパ」、BLOOD AND GUNS(英)「血と拳銃」劇場未公開、TV・DVD公開題名「復讐無頼・狼たちの荒野 」、TV公開題名「復讐の三匹」

カテゴリー(Tomas Milian)

監督ジュリオ・ペトローニ、脚本ジュリオ・ペトローニ、フランコ・ソリナス、イバン・デラ・メア、撮影フランシスコ・マリン、音楽エンニオ・モリコーネ、出演トーマス・ミリアン、オーソン・ウェルズ、ジョン・スタイナー、ホセ・トレス、ジョージ・ワン、ルチアーノ・カーサモニカ

大変格好の良いテレビ公開題名がつけられ、スマートな復讐劇を予想させるが、内容は、マカロニウエスタンの確固たるジャンルとして存在したメキシコ革命物のひとつ。善悪がはっきりせず、何が正義なのかを考えさせる展開が深いメッセージ性を備えており、名手ジュリオ・ペトローニ監督の面目躍如といったところだろう。マカロニウエスタンは必ずしも主人公が完全な正義の味方というわけではない無頼のキャラクターが魅力となっているが、この作品は特にその傾向が強い。やられたらやり返すという発想がいつの間にか善悪の垣根を取り払ってしまい、互いを被害者にしてしまう。そうした、暴力のむなしさを表現している傑作だ。

「第三の男」の、あのオーソン・ウェルズが独特の味をもった悪役で登場している点も興味深い。革命のまっただ中にあるメキシコへ、イギリス人医師ヘンリー・プライス(ジョン・スタイナー)がやって来る。革命軍のリーダー、テペパ(トーマス・ミリアン)を処刑寸前の危機から救い出したヘンリーの目的は、婚約者を暴行し、自死に追いやった憎き犯人テペパに自らの手で復讐することにあった。しかし、テペパと行動を共にするうちに彼が貧しい民衆のため、命をかけて戦っている真の革命戦士なのではないかとヘンリーは考えるようになっていく。そんな中、テペパにとって最も信頼すべき同士だった革命軍のペドロ(ホセ・トレス)がテペパを裏切っていることが判明する。涙ながらにペドロを処断したテペパに胸中を察したヘンリーは、ペドロの遺児パキート(ルチアーノ・カーサモニカ)を養子として引き取って英国に帰国することを決意する。

しかし、そんなヘンリー医師を引き留めたのは、政府軍で圧政をしくカストロ将軍(オーソン・ウェルズ)だった。テペパは、革命軍を装いながらも、その実は、略奪、暴行を厭わない粗野な悪人であるという将軍の言葉を聞いて再び心にさざ波が立ち始めるヘンリー医師。それぞれの主人公の気持ちが錯綜する中、再び蜂起した革命軍と、政府軍の戦闘が本格的に開始されるのだった。村人達も交え一丸となって戦う作戦が功を奏して戦闘に勝利し、宿敵カストロをも捕らえたテペパだったが、勝利に酔うあまりふとした油断から撃たれて重傷を負ってしまう。テペパを婚約者の仇と知りながら、彼に不思議な友情めいたものを感じていたヘンリー医師は、復讐を諦め懸命に手術を施す。手術をされながら、思い出話を語るテペパ。しかし、その中で昔暴行した女性のことに言及する。「革命のためだ、女のひとりやふたり」。この言葉を聞いた医師の顔色が変わる。手を血に染めながら、手術は失敗し、テペパは死んだと医師は革命軍に告げる。

皆が悲しむ中、復讐を果たして立ち去ろうとする医師に養子にしたペドロの遺児パキートが声をかける。笑顔で応える医師。しかし、遺児の持った銃からヘンリーに向けて銃弾が発射されるのだった。仲間がパキートに詰め寄る「彼が嫌いだったのか?」「いや、彼がメキシコを嫌っていたんだ。」どんなに無頼な男でも、たとえ父を殺した男でも、テペパは少年にとって英雄であったのだ。冷たく突き放しながらも深く心に残るラストである。テレビ公開された際の吹き替えでは「なぜ、殺した。彼は味方だろう?」「いや、彼はテペパを殺したんだ。」となっている。テレビ公開版では、いつも機知に富んだ洒落た吹き替えがなされることが多いが、今回に限っては、原本に軍配が上がるだろう。