マカロニウェスタン大全 「J&Sさすらいの逃亡者」 1973

2021-04-21

LA BANDA J&S CORONAKA CRIMINALE DEL FAR WEST(伊) 「西部の強盗J&Sの物語」、 CRIMINAL STORY OF AN OUTLOW COUPLE SONNY AND JED(英)「無法者カップル、ジェドとサニーの犯罪物語(原題)」劇場公開作品(劇場公開前にTV公開)

カテゴリー(Tomas Milian)

監督セルジオ・コルブッチ、脚本セルジオ・コルブッチ、マリオ・アメンドーラ、サバット・チウフィーニ、アドリアーノ・ボルゾーニ、撮影ルイス・クアドラード、音楽エンニオ・モリコーネ、出演トーマス・ミリアン、スーザン・ジョージ、マーチン・バルサム、エドワルド・ファハルド

この作品は、マカロニウエスタン版「道」、薄幸の女性ジェルソミーナと本作の少女サニーの姿が重なって見えてくる、と褒めたいところだが、残念ながらセルジオ・コルブッチ監督にしては演出の粗さが目立ち、豪華なキャストやスタッフに期待しすぎるとがっかりさせられることになる。海外でも「マカロニのくせに軟弱すぎる」とかの理由で、ヒットしなかったようだ。

粗野で自らの欲望のままに行動することしか知らないお尋ね者ジェド・トリガード(トーマス・ミリアン)は、非情な保安官フランシスカス(テリー・サラバス)に追われる途中で、死んだ叔父を埋葬する途中の少女サニー(スーザン・ジョージ)と出会う。だれひとり頼る者がないサニーはジェドの後につきまとう。サニーを利用することしか考えていなかったジェドは、平気で彼女を置き去りにしたり、売春宿に売り飛ばそうとしたり、散々に扱うのだが、なぜかサニーは、ジェドから離れようとしない。ここが残念なところの一つ。事前に何らかの伏線があり、サニーがジェドを慕う理由付けの裏話のようなものがあれば、半ばで幸せそうなカップルを見てサニーが涙するシーンなどは印象的になるはずだった。しかしながら、なぜサニーがジェドを慕うのかは、明確に描かれていない。サニーの「愛してる」の一言でジェドがサニーと結婚を決めるほどに変化してしまうのもあまりに不自然な感じだ。

いつの間にか、サニーの純粋さに動かされ2人連れの逃亡の旅が始まる。保安官の追跡をかわしながら喧嘩したり仲直りしたり、ほのぼのとした道中記として描かれている。途中の売春宿で、皿に山盛りのスパゲッティをジェドが平らげるシーンでミリアンはこうつぶやく。「スパゲッティてのは天才の発明だぜ」スパゲッティ(マカロニ)ウエスタンの屋台骨を支える俳優の台詞として聞いて思わず笑ってしまった。無法の男女の逃避行といえば「俺たちに明日はない」を思い浮かべるが、破滅に向かって暴走するあのような悲愴感はない。結局結婚した二人は強盗稼業を重ねるものの、大金持ちのドン・ガルシア(エドワルド・ファハルド)の妻に浮気心を起こしたジェドが、ガルシアの妻を誘拐、嫉妬に駆られたサニーの密告で、二人はフランシスカスとガルシアの一団から周囲を取り囲まれ絶体絶命となる。

ここでお馴染みの機関銃が登場するが、これが故障して動かなくなったり、途中の銃撃戦で盲目になった保安官の壮烈な復讐戦を予想すれば、サラバス保安官は、情けなくも手榴弾を取り落としてあっさりと自爆してしまったり、予想とは異なるゆるい展開となっていくシーンが多い。これが、意外性というより肩透かしを喰らう感じで拍子抜けしてしまう。コルブッチ監督はこのような男女の心の機微を描写する作品はあまり好みではなかったらしく、最初から最後までぎこちない感じであった。

ただ、粗暴なジェドを慕う少女サニーを演じる適役スーザン・ジョージの愛らしさと、平気で牝牛の乳首に直接しゃぶりつくミリアンの体当たりの演技はやはり見所。ラストはサニーが自分にとって掛け替えのない存在であることに気が付いたジェドが一度は捨てたサニーの後を追う場面で終わる。コルブッチ監督独特の壮烈な描写は見られないものの、降りしきる雨の中を濡れそぼりながら2人で旅する姿、美しい夕陽をバックに馬を歩ませるシーンなど美しいシーンにモリコーネの音楽が見事に重なって心に残るいくつもの画面を作り出している。