「血斗のジャンゴ(67)」

2020-07-05

FACCIA A FACCIA(伊)「1対1」、FACE TO FACE(英)「1対1」劇場公開作品、TV公開題名「流血の用心棒」

カテゴリー( Tomas Milian)

監督セルジオ・ソリーマ、脚本セルジオ・ドナティ、セルジオ・ソリーマ、撮影ラファエル・パチェコ、音楽エンニオ・モリコーネ、出演トーマス・ミリアン、ジャン・マリア・ボロンテ、ウイリアム・バーガー、ヨランダ・モディオ、ジャンニ・リッツォ、アンヘル・デル・ポーゾ、アルド・サム・ブレル、フランク・ブラナ、ネロ・パッツォフィーニ、ホセ・トレス

「情無用のジャンゴ(66)」の直後に公開されたミリアンの主演作ということで、残酷西部劇の第2弾という宣伝をされていた。しかし、この作品は「情無用のジャンゴ」とは全く異なる作風だ。監督は「復讐のガンマン(67)」のセルジオ・ソリーマ。ジャン・マリア・ボロンテとの共演で善と悪との葛藤を描いた快作となった。ミリアンも他の作品で見せているおふざけは影を潜め、彼のさっそうとした魅力が最も光る一編である。

ドラマはジャン・マリア・ボロンテを軸に展開する。大学の教授であるブラッド・フレッチャー(ジャン・マリア・ボロンテ)は、肺を病み、療養のため西部にやって来る。ところが旅の途中でたまたま出会った凶悪犯が彼を人質にとって逃走するのである。不信感を抱きながら逃走するうちに生活環境も性格も異なる2人は不思議な友情で結ばれ始める。この凶悪犯ボレガード(ボウ)ことソロモン・ベネット(トーマス・ミリアン)は、賞金首のお尋ね者でありながらも、生活に苦しんでいる仲間を集め山に要塞を築いていた。自らの未来に希望を失っていたブラッドは、これといった目的もなしに、ボウと共に山塞に同行する。山塞の生活は、自由で活気に溢れており、ブラッドはここで初めて己の生きがいを見つけ出す。

それまで得た知識と思考力でボウの参謀としての地位を固めていくブラッド。更にシリンゴ(ウイリアム・バーガー)という凄腕の流れ者をも仲間に加え山塞は勢力を強くしていく。しかし、拳銃と暴力の魔力に取りつかれたブラッドの作戦は次第に冷酷なものになっていった。山塞維持の資金を得るために銀行襲撃の計画を立てるが、人殺しをせずに襲撃を終わらせたいとするボウと人殺しもやむを得ないとするブラッドとの対立が深まる。いよいよ決行となるがボウのミスとシリンゴの裏切りにより襲撃は失敗。ボウは捕らえられ、かろうじてブラッドは山塞に逃げ延びる。シリンゴはお尋ね者のボウを捕らえるために派遣されたピンカートン探偵社の捜査官だったのである。集団狂気に陥った町民達の山塞の住民に対する大虐殺が始まる。ボウは脱出して山塞を救えるのか、そして、ボウの山塞を乗っ取りそこの首領として納まってしまったブラッドや、ボウの生きざまに共感をおぼえはじめたシリンゴはどう動くか、という興味で観る者を引っ張る。

ラストは大勢の追っ手を砂漠の真ん中でボウとブラッドが2人で迎えうつ構図。最高に盛り上がる場面から、展開は急転直下、思いがけない結末となる。この結末の処理がやや乱暴な気もするが、作品全体を通して描かれる男の友情と引くに引けない男の意地が心地良い。徐々に変貌をしていくボロンテ演じるブラッドも素晴らしいが、やはり格好良いミリアンに注目したい。今回のミリアンのスタイルはインディアンを思わせる長髪にピンとはねた口髭。いつものことながら個性的で楽しい。また、彼の性格設定が魅力的だ。映画の前半で、用心棒としての仕事を果たすため心ならずも数人の敵を撃ち倒すものの、それからラストまで主人公である彼が人を撃ち殺すシーンは他のマカロニの大量殺戮に比較して極端に少ない。

それを象徴するシーンが銀行襲撃でボウが捕らえられるシーンである。襲撃の現場にたまたま通りかかった少年に騒がれるのを防ぐため、ボウは「静かにしろ」とナイフを突き付ける。しかし、動転した少年は「強盗だ!」と叫びながら走りだす。それをボウは止められない。刺し殺すことができなかったのである。マカロニウエスタンは殺すことだけが魅力とは言えない。派手な撃ち合いのシーンのみに頼らず、主人公たちの心の描 写の重点を置くことで本作品のように主人公の凄みと執念は実にカ ッコよく表現できるのである。