マカロニウェスタン大全 「復讐のガンマン」 1967

2021-04-21

LA RESA DEI CONTI(伊)「復讐」、THE BIG GUNDOWN(英)「大いなる決闘」、劇場公開作品

カテゴリー( Lee Van Cleef)

監督セルジオ・ソリーマ、脚本セルジオ・ドナティ、セルジオ・ソリーマ、撮影カルロ・カルリーニ、音楽エンニオ・モリコーネ、出演リーバン・クリーフ、トーマス・ミリアン、ウォルター・バーンズ、ジェラード・ハーター、アンヘル・デル・ポーゾ、ニエベス・ナバロ、マリア・グラダナ、ルイザ・リベリ、フェルナンド・サンチョ

マカロニウエスタンを代表する監督、セルジオ・レオーネ、セルジオ・コルブッチは様々に論じられることが多い。しかし、もう一人マカロニウエスタンの作家として注目すべき人物がいる。セルジオ・ソリーマである。雄大なスケールと凝った画面で主人公の哀愁を描き出すレオーネ、ひたすら主人公の執念と凄惨さを追求するコルブッチに比較して、ソリーマの3作品、本作と「血斗のジャンゴ(67)」「続・復讐のガンマン(67)」は屋内よりも岩山や砂漠の自然の風景を舞台として切れ味鋭いストーリー展開の中に男の友情を描き切っている。この「復讐のガンマン」も、沈着冷静な賞金稼ぎジョナサン(リーバン・クリーフ)と無実の罪で追われるメキシコの若者コチーヨ・サンチェス(トーマス・ミリアン)の丁々発止のやり取りとその友情が物語のテーマになっている。

クリーフは、年齢の重みを感じさせる貫録ある演技。更に今回の作品では、彼の貫録を増す設定として単なる賞金稼ぎではなく、元保安官であり上院議員選へ出馬するよう求められる人格者として描かれている。一方のコチーヨは、ジョナサンとは対照的に明るく陽気なメキシコ人の若者。町の有力者ブロックストン(ウォルター・バーンズ)から依頼されたジョナサンは少女殺人犯コチーヨを追跡する。この追跡が作品の大半を占めているのだが、この追跡の過程で起こるエピソードのそれぞれに味があって面白い。ただ、気になるのは追われるコチーヨが常にゆとりを持っており、追われる者の悲しみがあまり伝わってこない点。熟練の賞金稼ぎであるジョナサンが、貧しいメキシコ人の若者に何度も出し抜かれてしまうところもちょっと情けないのである。 ミリアンは、寡黙で凄みをきかせた役よりも陽気なキャラクターの作品が多いが、こうしたキャラクター設定は、ミリアンの個性を生かすことにはならないのではないだろうか。この作品でも、追われる者の悲愴感をにじませながらクリーフと貫録でも互角に渡り合う主人公をミリアンならば演じることができたと思われるのだ。

度重なる追跡の過程でジョナサンは、この事件に疑問を感じ始める。ジョナサンの読みの通り、真犯人はコチーヨではなかった。ブロックストンの義理の息子シェンプ・ミラー(アンヘル・デル・ポーゾ)が少女殺しの犯人なのである。ブロックストンは事実を目撃したコチーヨを犯人に仕立てて証拠を消そうとしていたのだった。コチーヨを捕らえるための大掛かりな捜索隊が組織され、コチーヨは山へ山へと追い詰められる。

これからが、この作品の最大の見せ場。ブロックストンの娘婿シェンプとジョナサンに追い詰められたコチーヨだったが、ここでジョナサンはコチーヨの味方へと転じるのである。コチーヨとブロックストンの息子によるナイフと拳銃による決闘が展開する。モリコーネのテーマに乗ってゆっくりとナイフを構えるコチーヨ。それまでの陽気なミリアンが瞬時に影を潜め、あの凄みのあるミリアンに変貌する。数秒間の睨み合いの果てに、瞬間コチーヨの右手が翻り、ナイフが飛ぶ。数多いマカロニウエスタン作品の中でも屈指の格好良さだ。

そこに駆けつけたブロックストンは、裏切ったジョナサンを消すためにオーストリアから連れてきた用心棒シュレンベルク男爵(ジェラード・ハーター)にジョナサンとの対決を命じる。物語の当初からブロックストンに付き従っていたこの男は、ピンと八の字のひげを伸ばし、一眼鏡を掛けた貫録十分な風貌で、クリーフ演じるジョナサンに貫録で全く見劣りしていない。ヨーロッパ製の拳銃ル・フォウショウを独特のスケルトンリグから抜き撃ちするという1対1の決闘で圧倒的な強みを発揮するこの強敵との対決は復讐や因縁による決闘がほとんどのマカロニウエスタンの中でも珍しい純粋な達人同士の対決となって独特の緊迫感を生んでいる。

相討ちながらも、坂を転げながらの連射でかろうじてこの対決を制したジョナサンは、いよいよラスボスのブロックストンとの対決に望む。これは長距離からの、ライフルと強力猟銃による対決、ここではコチーヨとコーベットの見事な連係プレイが見られる。じっくり見せる決闘シーンのつるべうちで、ソリーマ監督独自の作風を存分に堪能できる。ラストシーンも互いをねぎらう言葉をかけながら北と南に去っていくさわやかな別れ。マカロニのベストテンに挙げられる後味のよい傑作ウエスタンである。