「裏切りの荒野(67)」

L’UMO,L’ORGOGLIO,LA VENDETTA(伊)「男と、誇りと、復讐と」、THE LOVE,THE PURIDE,AND THE VENGEANCE(英)「男と、誇りと、復讐と」劇場公開作品

カテゴリー(Franco Nero)

監督ルイジ・パッツォーニ、脚本スーゾ・チェッキ・ダミーコ、ルイジ・パッツォーニ、撮影カミロ・パッツォーニ、音楽カルロ・リスティケリ、出演フランコ・ネロ、ティナ・オーモン、クラウス・キンスキー、アルベルト・デラクア、リー・バートン、フランコ・レッセル、マルチェラ・ラベリ

「栄光は遠ざかり、恋も終わった。硝煙の中へただ一人砂塵吹きすさび、嵐の銃弾が俺を呼ぶ!」というコピーが当時のポスターにある。ポスターのデザインも勿論従来のマカロニウエスタン調。派手な銃撃戦を期待させるものだ。これまでに公開されたネロ主演の3作品の流れやこのポスターなどで期待して観に行った人は、全く面食らってしまったのではないか。この宣伝と作品の内容はそれだけ異質なものだった。

まず、厳密に言えば本作品は西部劇ではない。撮影された場所のみでなく物語の舞台そのものもスペインという設定である。そしてなにより、異色なのは主人公のホセ(フランコ・ネロ)が空に向かって威嚇射撃をする他は、拳銃を1発も撃たないということである。マカロニウエスタンの中でも人を殺さない異色作は後期のコメディ路線になっていくつか生まれたが、この作品は、主人公が拳銃の名人であるという設定すらない。マカロニウエスタンの主人公は金・復讐という強い目的をもっており、そのために敵を倒すための凄まじい戦い・決闘が展開されていく。しかし、奔放なヒロインから翻弄され、破滅していく主人公は、さっそうとしたヒーロー像からは程遠く、ひたすら自虐的。

セビリアの軍曹ホセ(フランコ・ネロ)は、たばこ工場で働く同僚を傷つけたジプシー女カルメン(ティナ・オーモン)を連行する途中で逃走されてしまう。降級されたホセの前に再び姿を現すカルメン、怒るホセは、全く悪びれないカルメンの小悪魔的な魅力に憑かれ、ずるずると関係を続けるようになる。やがて、ホセは彼の上官(フランコ・レッセル)とカルメンを巡って三角関係に陥りついには上官を殺害してしまう。カルメンの手引きでジプシーの隠れ家である山中に身を隠しながら、野盗の仲間に身を落としていくホセ。強盗団の中でもカルメンの夫と称するガルシア(クラウス・キンスキー)と激しく対立するホセは、さらなる殺人を重ねていく。何とか盗賊仲間のダンセイロ(リー・バートン)とアメリカに密航する機会を得るものの、港に姿を現さないカルメンに未練を残すホセは、花形闘牛士に熱を上げるカルメンを拉致。終にカルメンの愛が得られないと悟るや、ナイフでカルメンを刺し、死の接吻をかわす。

そしてラストは、みじめな逃亡の後に警官隊の銃弾に息絶えるのである。1人の女のために、人生を転落していく男の悲劇。ホセ、カルメンというネーミングからも分かるとおり、これは、歌劇「カルメン」そのものであるが、この設定はマカロニウエスタンには全く似つかわしくない。自由奔放なスペイン娘を演じるティナ・オーモン、クラウス・キンスキー、コレ・キトシュなどの豪華な配役、悲愴感を盛り上げるギター音楽など、メロドラマカルメンそのものとしては、観る価値があるが、マカロニウエスタンというジャンルにはあまり加えたくない作品である。