「真昼の用心棒(66)」

2020-06-28

TEMPO DI MASSACRO(伊) 「皆殺しのとき」、 MASSACRE TIME(英)「皆殺しのとき」劇場公開作品

カテゴリー(Franco Nero)

監督ルチオ・フルチ、脚本フェルナンド・ディ・レオ、撮影リカルド・パロッティーニ、音楽ラロ・ゴーリ、出演フランコ・ネロ、ジョージ・ヒルトン、ニーノ・カステル・ヌオーボ、ジョン・マックダクラス、リン・シェイン、ロマーノ・プッポ

「続・荒野の用心棒(66)」に続くフランコ・ネロの日本公開第2作目。前作の印象があまりに強烈であったが、そのイメージをそのまま引き継いで豊富なガンプレイを盛り込み、全編が絵になる画面の連続で構成されたマカロニの代表作のひとつである。

故郷を離れ、砂金探しのグループの中にあったトム・コーベット(フランコ・ネロ)の元に突如故郷の町へ帰って来いという知らせがもたらされる。訳が分からないままに戻ってみると、町はスコット(ジョン・マックダクラス)の一族に乗っ取られ、財産を譲ったはずの兄ジェフ(ジョージ・ヒルトン)は、ひどい飲んだくれとなって惨めな暮らしを余儀なくされていた。真相を聞き出すためトムは、直接スコットに会いに行くが、そこで凶悪なスコットジュニアから、散々鞭で痛めつけられた揚げ句に叩きだされた。さらには、乳母であったメルセデスまでジュニアの一味から殺されるに至って、ついにトムの怒りが爆発。兄のジェフと共にスコットの屋敷に殴り込み、スコット一家の連中を皆殺しにしてしまう。

数あるマカロニウエスタンの中でもこの撃ち合いの場面は圧倒的な迫力に満ちている。撃ち合いのみならず、絵になる画面作りという面でも注目すべき場面が盛りだくさん。なかでも夕陽を浴びながらマントを翻して故郷の町に帰るシーンは生粋のマカロニシーンだ。ただし、前半はネロ扮するトム・コーベットが町を乗っ取ったスコット一家の横暴にぐっと耐える場面が続き、いささか消化不良気味な印象。

開幕で場面をさらうのはスコットJRを演じるニーノ・カステル・ヌオーボである。砂埃の中でも白のタキシードに身を固めて首を横にかしげ、神経質そうに頬をひきつらせる演技は「シェルブールの雨傘」での甘く純情な若者とは全く別人の薄気味悪さを感じさせる。このスコットJRの悪いこと悪いこと、町を出ようとする家族の子供を撃ち殺したり、人に犬をけしかけてかみ殺させた り、極悪非道の行為をやってのける。特に、トムを得意の革のムチで叩きのめし、血まみれにする描写は恐ろしい。トムの顔面にいく筋ものムチの跡がつきその傷から血が吹き出す。よろめきながら立ち上がったトムの鮮血が白いタキシードに飛び散るというシーンは「続・荒野の用心棒(66)」や「情無用のジャンゴ(66) 」などの作品とともにマカロニウエスタンは残酷描写が売り物という定説を築くに到った。

更には、拳銃で相手を倒すシーンもそれまでにはない凄惨さが見られる。相手の腹にピタリと銃口を押し当てて発射する、倒れた相手にありったけの弾丸をぶち込む、相手の額に風穴が空くなどの凄惨な描写は、後にイタリアン残虐ホラー映画の巨匠と謳われたルチオ・フルチ監督の個性が確かに芽をふき始めた証しでもあると考えられる。物語の後半から、真実の人間関係が明かされ始める。スコット ジュニアはトムの実弟であり、家長のスコットはトムの実父であったのだ。トムに財産を譲ることを決意したスコットが、トムを呼び戻した張本人だった。そのことに気づいたジュニアは、なんと実の父を殺し、邪魔な存在である実の兄トムをも殺そうと待ち受ける。拳銃を抜くことを拒んでいたトムだったが、終に堪忍袋の緒を切って凄まじい銃撃戦「皆殺しのとき」の幕開けとなる。前半の暗く、沈んだ描写から一転してスコット家に殴り込みをかけてからの画面は、がぜん活気にあふれ、ネロもそれまでためていたエネルギーを全開にして撃ちまくる。

ここで注目したい男が、トムとは父を異にする兄のジェフ・コーベット(ジョージ・ヒルトン)。後期のマカロニウエスタン、ハレルヤシリーズ等で多く主役を演じたハンサムガイの彼はこの作品では、ネロ以上の儲け役。余裕たっぷりのガンさばきでピンチになったトムを度々救っていた。このジェフとトムの2人が見せる数々のガンプレイがこの映画の最大の見せ場。馬を疾走させながら、その横腹に身を隠して、バッタバッタとなぎ倒す。空中に瓶を放り投げ、そちらを見ないで撃つ。坂を転がして自分の乗ったワゴンを疾走させ、敵のバリケードにぶつけた反動を利用して空中回転、敵の背後に着地して素早いファニングを見せる等、マカロニ屈指の銃撃戦の連続で観ている者をうならせた。

全編これぞマカロニウエスタンというアクションとハードな描写の連続。ラストでスコットJRを自滅させる結末などは、話を終わらせるために付け加えたようなもの、なんと言っても派手な撃ち合いの面白さを楽しむマカロニウエスタンであった。ちなみに、当初はニーノ・カステル・ヌオーボ演じるスコットジュニアは、クラウス・キンスキーが、演じる予定であったらしい。ヌオーボの演技も強烈な印象を残したが、キンスキーが狂気のジュニア役を演じた姿を見てみたい気もする。