「続・荒野の用心棒(66)」

DJANGO(伊)「ジャンゴ」、DJANGO(英)「ジャンゴ」劇場公開作品

カテゴリー(Franco Nero)

監督セルジオ・コルブッチ、脚本フランコ・ロセッティ、ホセ・G・マエッソ、ピエロ・ビバレイ、撮影アンジェロ・ノビ、音楽ルイス・エンリケス・バカロフ、出演フランコ・ネロ、エドワルド・ファハルド、ロレッダナ・ヌシアク、ホセ・ポダロ、ジーノ・ベルニーチェ

エレキギターの響きと女性コーラスによる「ジャンゴー」という叫び声、そこにロッキー・ロバーツ、ベルト・フィアのドスの利いたボーカルが重なっていくあの名曲「さすらいのジャンゴ」この主題歌に導かれて画面は始まった。スクリーンに映し出されるのは1人の男の後ろ姿。馬を無くしたのか、鞍やランプなど旅の道具を肩にかついだ上に何かを黙々とロープでひきずっている。ボロボロになった北軍の軍隊コートとブーツを身につけた男の足元から、ひきずっている「それ」にカメラが移動する。男がひきずっていたのは何と棺桶だ。しかもシトシトと雨が降り続くぬかるみの中を。ひきずられる棺桶の上に真っ赤な文字でタイトル「DJANGO」が浮かび上がる。それまでの西部劇の常識を外れた強烈な印象を残すオープニング。この開幕から、コルブッチ監督は観る者をコルブッチのマカロニウエスタン世界に引きずり込んだ。

“ジャンゴ”という名前は、その後数多くのマカロニウエスタンに主人公として登場し、マカロニヒーローの代名詞的存在となったが、フランコ・ネロが演じた本作品の初代ジャンゴに個性・迫力どれを取っても及ぶものはとうとう現れなかった。棺桶といっしょに町に現れたジャンゴは、ならず者達からリンチを受けようとしていた女マリア(ロレッダナ・ヌシアク)を助ける。町では、メキシコ人とアメリカ人の2組の暴力集団が対立しており、それからマリアは逃れようとしていたのだ。マリアを連れて町に入ったジャンゴは、酒場でアメリカ人側のグループのボスであるジャクソン大佐(エドワルド・ファハルド)に出会い、因縁をつけてきた手下達を凄まじい早撃ちで撃ち殺した。このジャクソン大佐は、ジャンゴに対抗すべき腕も度胸もないが、極端な人種差別者でメキシコ人を射撃の的にしたり、手下にKKKを連想させる赤い覆面をつけさせたり、と異常さを感じさせる。これも多くの悪役を演じたファハルドの一番のはまり役であろう。

酒場での仕返しに大勢の手下を引き連れて町に乗り込んで来るジャクソンの一味。待ち受けるジャンゴはひたすら己の中にためたエネルギーを爆発させる瞬間を待ち続けるかのように寡黙で感情を表さない。ぬかるみの泥の中、真っ赤な覆面をつけ、十字架を押し立てたジャクソンの一味が続々と集結してくる。このシーンはホラー映画を連想させる不気味で退廃的なイメージだ。ジャンゴは朽ち木の陰に隠れたまま動かない。絶体絶命、次の瞬間ジャンゴは棺桶の中からマシンガンを取り出すとバリバリと撃ちまくり、ジャクソン一味を掃滅してしまう。前半最大の見せ場であるマシンガン乱射シーンは「荒野の用心棒(64)」にも描かれていたし、後のマカロニウエスタンで繰り返し踏襲して描かれることになるのだが、やはり、この作品ほどの強烈な印象は残せていない。それまでクールで眉ひとつ動かさなかったジャンゴがマシンガンを手にするや、歯をくいしばった必死の形相に豹変する。まさしく本性を剥き出しにして己のエネルギーを解放する喜びに恍惚となっている表情だ。このマシンガン乱射シーンはフランコ・ネロという希有な個性をもつ役者によって演じられたからこそマカロニウエスタンの歴史に残る名場面となり得たといえる。

ジャクソン一味を壊滅させた後に登場するのがウーゴ将軍(ホセ・ポダロ)率いるメキシコ人グループだ。異常なジャクソン一味に対して少しはましかと思う観客の期待とは裏腹にこのメキシコ人グループは更に残虐な行為をやってのける。逃げ遅れた、ジャクソン一味のひとりである牧師を捕らえるとその耳を切り落として口に押し込む。あまりにも残酷なシーンのため国によっては本作品の公開が見合わされたそうだ。ジャンゴの狙いはこのメキシコ一味と組んで、政府の金塊を奪うことにあった。この恐ろしい一味に平然と仲間入りを果たすジャンゴも相当な悪であることが伺える展開だ。まんまと金塊の強奪に成功したウーゴとジャンゴだったが金塊の分け前でトラブルを起こし、ジャンゴは金塊を独り占めして逃走する。逃走する途中で馬車から転げ落ち、底無し沼に沈んで行く黄金を追って沼に飛び込むジャンゴ。正義や愛のためではなく金のため、平気で仲間をも裏切る主人公の登場。

コルブッチとネロはこれまでハリウッドの西部劇では描き出せなかった生々しい欲望を伴った、それ故にこそ恐ろしい迫力をもったヒーローを生み出したのだ。底無し沼にはまったジャンゴを追って来たウーゴ将軍は、裏切り者であるジャンゴの両手を馬の蹄で踏み付け2度と拳銃が握れないようにしてしまう。凄惨で恐ろしいシーンだが、ピンチに立たされてこそヒーローは輝く。ジャンゴの両手が使えないことを知って現れたのは、ジャンゴのマシンガン攻撃からもしぶとく生き残り、果ては宿敵ウーゴ将軍一味も待ち伏せで全滅させて意気揚がるジャクソン大佐だ。

ジャンゴはつぶされた両手に血まみれの包帯を巻き付けてジャクソン一味を墓場で待ち受ける。動かない両手でどうやって拳銃を撃とうというのか、それとも他に策があるのか。しかし、ジャクソンが墓場に現れてもジャンゴは必死になって持てない拳銃を構えようとしているだけである。何ら策がある様子でもない。いったいどういう結末を迎えるのかという不安感の中で一転、叫びと共に拳銃を両手に挟んだジャンゴはトリガーを十字架の金具に押し付けながらあっと驚く連射を披露するのである。絶対にあり得ないことであってもこの迫力には思わず納得させられてしまう、驚くべきガンプレイ。血にまみれたガンを十字架にひっかけたまジャンゴはよろめきながら墓場を後にする。再び重なる「さすらいのジャンゴ」のメロディ。どこを切っても見どころばかり、マカロニのエキスが滲み出てくるかのようなマカロニウエスタンの最高傑作が、これだ。