ご挨拶

2019-10-31

マカロニウエスタンが大好きな水上栄一と申します。

私が幼少の頃から鑑賞し続けてきた、マカロニウエスタン500本以上の作品についての見所やストーリーをまとめた「マカロニウエスタン大全」をホームページで公開することにいたしました。
マカロニウエスタンとは、本来アメリカの西部開拓時代を描いたウエスタン映画をイタリア映画界が作成した擬似西部劇のことで、ヨーロッパやアメリカではスパゲッティウエスタンと称されています。擬似西部劇とはいいながらもスペインの荒野をアメリカの西部に見立てて描かれるスタイリッシュなファッションと派手なアクション、男の哀愁を漂わせる独特の物語展開で1960年代から1970年代に世界の映画界を席巻しました。
しかし、ブームを巻き起こしていた当時は、あまりの人気ぶりに正統派を自称する映画ファンや評論家からは、下らない、残酷、派手なだけ、マカロニだけにケチャップでこねあげて切ってみれば中身はがらんどう、等と散々に批判されていたのも事実です。しかし、そのマカロニウエスタンが50年近く経た現在でも、私の人生そのものを支えてくれる大きな生き甲斐になっていることを思うと、この作品群が、単なる奇をてらった派手なアクションの魅力だけで人を引きつけていたとは思えません。事実、世界はもちろん、日本国内にも、私など及びもつかないコアなファンが多数おられます。また、マカロニウエスタンの出現以前と以後ではアクション映画の質や映画音楽の在り方が大きな変容を見せました。「スター・ウォーズ」などにもその片鱗が伺えます。マカロニウエスタンを批判していた多くの評論家やファンは、「どれも似たり寄ったり」と評していましたが、とんでもありません。どんな低予算の小作品でも一つ一つの作品に独特の個性と、観る者をうならせるアイデアが盛り込まれていました。吹きすさぶ砂塵の中でポンチョやコートを風にたなびかせながら、悲壮な対決に挑むひげ面の男達の格好良い生き様、これほど男の血を沸き立たせる描写に溢れた作品群は他に観ることはできないのではないでしょうか。

思えば、小学校6年生のころにテイチクレコードから発売された「西部劇音楽全集」を父親から買ってもらったことがマカロニウエスタンとの初めての出会いでした。日本の楽団の演奏によるカバーバージョンでしたが、ここでアメリカ製西部劇の明るく牧歌的な音楽に比べ、マカロニ音楽の格好良さを追求したその音づくりにマカロニとアメリカ製の西部劇の本質的な違いを嗅ぎ取っていたようです。

また、なかなか劇場で映画を鑑賞することが難しい当時の私にとって、幸いしたことは、1970年代に入って続々とマカロニウエスタンがテレビ放映されはじめたことでした。毎日テレビ欄をチェックしながらマカロニウエスタンらしきものは、とにかくすべて見るということを心がけたものです。マカロニっぽい米国西部劇や、用心棒の名前を付けたギャング映画など期待を裏切られることも度々でしたが、そのころに根気強く資料にあたるという習慣が養われていったように思います。

そしてついに、2002年、マカロニウエスタンに対する解説書『マカロニウエスタン大全』を丸善より自費出版することができました。しかし、イタリア本国で作られたマカロニウエスタンの数は、実に500本以上あります。しかも、1作品の題名が何度も変更されたり、ほとんど同じ作品を部分修正して別作品として公開されたりする例もあり、その実数は非常に把握しにくいのが現状です。改めて読み返すと大全には不十分な点や誤謬も多く、自分自身でさらなる完全版を必ず書き上げてみせると心に誓っておりました。当時と現在では情報を得る手段が格段に違い、今回このホームページに挙げた「マカロニウエスタン大全」はそのときの改訂版というより、全くの別物といってよいほど量も内容も充実したものになっています。

米国やイタリアではそれぞれの言語でマカロニウエスタン事典が数冊編纂されていますが、マカロニウエスタンの全作品を、このように日本語で網羅した解説は日本初だと思います。数本を除いて実際に作品を最後まで鑑賞した上で解説を書いておりますので内容の正確さにおいても自信があります。

もう一つの特徴が、各作品のイラストです。マカロニ全盛期は、ビデオのない時代ですから、格好良い主人公のスタイルや決闘場面の構図の素晴らしさを少しでも記憶に止めておきたい一心で、真っ暗な映画館の中で、また小さなテレビ画面の前で画面のスケッチという手段で、描き溜めていたものがその始まりです。

今では、キャプチャー画面やスチール写真をもとにかなり細密なイラストを残せるようになりました。本ホームページでは、各作品につき1枚はキャラクターや場面のイラストをつけ、作品の雰囲気を表現しています。
スチール写真の方が良いというご意見もあるかと思いますが、イラストならば肖像権を気にする必要もなく、かつ写真では表現し得ないその作品の味わいを表現することも可能です。私のイラストは、多くのファンに好評で、「このイラストを眺めるだけで楽しい」「ぜひ譲ってほしい」との依頼は多くあります。また、海外のファンも私のイラストを喜んでくれており、フェルナンド・サンチョjrやジュリアナ・ジェンマ(ジュリアーノ・ジェンマの長女)にも手渡ししたという楽しい思い出もあります。
本当に好きなものならば、周囲の声にまどわされることなく、とことん追求していくことが大切なようです。何かに打ち込むことができるということは、他の分野にも良い影響を与えてくれることを今の私は実感しています。マカロニウエスタンについて大全を制作するという自らの夢もあきらめずに継続したからこそ実現できたことは間違いありません。
マカロニウエスタンは、個々の作品だけ観てももちろん面白いのですが、実はジャンル全体を見渡しながら、登場するガンマンの個性、凝ったストーリーの特徴を比較しながら鑑賞してよりおもしろさが増してくるジャンルだと思います。
このホームページに興味を持たれた方は是非「夕陽のガンマン」や「怒りの荒野」からマカロニウエスタンに触れてみて下さい。現在の若者が見ても、その面白さと格好良くて壮絶なアクション、哀愁漂う音楽に魅入られるに違いないと思います。
この、ホームぺージが、新しいマカロニウエスタンファンを生み出すきっかけになればこんなに嬉しいことはありません。

作品選定の基準について

イタリアで制作された西部劇作品が作品選定の基準です。多国籍の資本による出資作品であっても、イタリアの資本が絡んでいる場合はマカロニウエスタンと見なすことにしました。時代背景と舞台は、西部開拓時代はもとより、メキシコを舞台にしたメキシコ革命もマカロニウエスタンには欠かせないジャンルなので当然入れています。しかし、例外的に「裏切りの荒野」「風の怒り」等スペインが物語の舞台になっている作品も雰囲気はどうみてもマカロニウエスタンなので、掲載することにしました。選定に大きく迷ったのが、イタリアの資本が関わらないスペインやイギリスなどの資本で制作されたヨーロッパ製西部劇です。マカロニウエスタンではないといいながらも、切り捨てるには惜しい、マカロニウエスタンの雰囲気が横溢している作品も多くあります。南アフリカ製やメキシコ製の作品も同様です。これらの作品は、あくまでマカロニウエスタン準ずるものとして、マカロニウエスタンの雰囲気を強く感じる作品に限り掲載することとしました。

選定基準はあくまで私個人の感覚です。そのため、ヨーロッパ製西部劇でありながらも米国西部劇のイミテーションとしか思えないドイツ製の作品はほとんど掲載していません。逆に、制作も舞台背景も紛れもないマカロニウエスタンでありながらも、マカロニのもつ壮絶な銃撃戦、悲壮感、男の哀愁などが全く感じられないコメディをどう取り扱うかにも悩みました。「荒野の無頼漢」や「風来坊~花と夕陽とライフルと~」などのように、西部劇の中にお笑いが取り込まれているのではなく、お笑い作品の舞台が西部というチッチョとフランコもののような作品群です。これも、マカロニウエスタンのジャンルの中にコメディが存在するものと捉えて、コメディ作品もほとんど掲載しています。ただし、あまり個人的に興が乗らないため必然的に量的にも貧弱なものになってしまっていることはご容赦下さい。

水上 栄一

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